Crap etc

□軍部の怪談-ロイ&レミーのゴーストバスターズ-
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※ちょっとオリキャラ出ますので、ワンクッション。
(内容としてメインはマスタング大佐。オリキャラことレミントン准将とゴーストバスター的なことをします←)











【軍部の怪談-ロイ&レミーのゴーストバスターズ-】


 細かな霧雨が煙っていた。
夜勤を控えた佐官が執務室に一人残っている―――物音のない静寂の空間。
昼間の喧騒は振り子時計の音に流され、篭っていた煙草の煙りも今は薄れている。
 帰り際に気の利く准士官が入れてくれたコーヒーは少しずつ冷えて行き、今は微かな温もりを残すだけ。
外勤が大半を占めた今週、溜まった書類もその分だけ。
愚痴を言えども書類は減らない。
有能な中尉が助力を惜しまないおかげで大分量は減ったが、夜勤を名目に捌けるだけ裁いてしまおうと決めた。


 毎度ながら静かな室内は落ち着かない。
見回してみるとこんなにも広く感じるものか。
いや―――これ程の部下達を背負えるようになったのか。
 理想を追い求め、何かをかなぐり捨て、今がある。
寂しい半面、嬉しいのだ。
人知れず笑う―――この言葉は、いつか自分が目指す場所に到った時に言ってやろう。


「ロイ、居るか?」

「准将殿」

「すまんな、ノックはしたんだが…」


 申し訳なさそうに苦笑いを浮かべるこの将校―――部下二名の元班長である。
直接の関わりも多い。
何せ幹部候補生時代の大先輩であり、数々の伝説を打ち立てた男でもある。
 無作法者の代名詞として用いられているくらいの男。
虚実は横に置くとしても、数度同じ戦場に立った自分としてはその生き様が潔く、簡単明瞭で―――人間として、惹かれた。


「何か火急の用件でも?」

「ああ、今日夜勤だって聞いてな。差し入れ持ってきたんだが、口に合うかな」

「これは有り難い。夜勤を控えて小腹が減ったところでしたので」


 紙袋に入った物を確認すると、如何にこの男が自炊とは無縁かを物語るに充分だ。
恐らく真っ当な食事を作れないのだろう―――それこそ所帯を持っていても可笑しくない年齢なのだが。
どういう理由から独身を貫くのか、一度問うたことがあった。
 返ってきた返答は非常にストイックなものであったが、その後にポツリと呟かれた言葉が印象的で。


『惚れた女には幸福になって貰いたい。俺は何時殉職するか分からない部署だから―――逐一嫁さんを不安にさせるようじゃ、所帯を持つ資格すらない』


 その責務の重さを、痛みを、殲滅戦に参加したからこそ理解できた。
故にそれからは何も尋ねていない。



「嫌な雨だな」

「ええ…暫くは続くようですが」

「やれやれ、今日から基地当直なんだがなぁ…」

「おや…?先日下番された筈では」

「交替した、まあ…家に居てもやることはないがな」


 窓際に立ち、外の様子を伺っていた男が当直腕章をくるりと指で回し、ポケットから煙草を取り出し口にくわえる。
了承を得ないのが何とも彼らしい。
 肺に送り込んだ煙を吐き出すと、思い出したように振り向く。


「何かあったら当直室来いよ。内線も受け付けるぞ」

「含みがありますが…何かとは何でしょうか?」

「―――…0時過ぎたら、執務室から出ない方がいい」

「…と、いいますと」

「………出るんだよ」

「……………は?」

「出るんだよ…マジで……うっ…うぅ…」


 何を言っているか理解出来ないが、取り合えず“出る”らしい。
戦車の砲弾すら恐れない屈強な兵士―――レミントンが半泣きになる位だから、何やら恐い気もするが。


 いい歳こいた髭面のオッサンが半泣きになるのもどうかと思う。
だがマスタングは知らなかった―――この言葉を咀嚼しなかったことにより後に起こる怪奇現象に………




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