Crap etc

□Vivid.
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【Vivid】vol.1

 各々の休暇が重なるということは珍しいことではない。
ただ、4人揃ってということは皆無と言っていいだろう。
多くても同時に非番になるのは二人程度―――だからこそ、私生活での付き合いにも一層の熱が篭る。
運よく夜勤に引っ掛からない日は、安い店に連れ添って行くこともある。
宅飲みと称してハボックの寄宿舎になだれ込むこともあった。


それぞれの距離感が余りないのも、こういった付き合いに起因するものがある。
ファルマンが辞退することもあったが、今になって考えて見れば移動当時くらいなものだった。


「明日休み被った人、手ェ上げろ」

「俺明日は半休で昼から勤務」

「僕は通常です」

「私は今日が夜勤ですので…午後から休みですが」


マスタングやホークアイにしてみても、この光景はもはや日常の一こまとして片付けられる出来事になった。
明日が非番のハボックが号令を掛けると、書類を捌く手を止めて三人がそちらに視線を向ける。
要約すると『明日時間空いてて俺に付き合ってくれる人は?』という意味になる。


「んじゃ明日午後空いてんのはファルマンだけか」

「何処かお出かけでも?」

「…まあ、ちょっとな」


言いにくそうに唇を尖らせるハボックの後を次ぐように、ブレダが悪戯っぽい笑みを浮かべる。
フュリーとファルマンの怪訝な顔を見て、ブレダが軽く笑い声を上げた。


「この前、煙草の灰落として気に入ってたジャケットに穴空い―――」

「お前が後ろからタックルしてきたからだろ。酔っ払ってたもんなぁ?」

「俺の責任かぁ!?」


小突き合いを始める二人を余所に、その様子を見ていた他の二人が笑う。
手を止めずに話を聞くあたりが、ファルマンとフュリーの真面目さを表しているといっていい。


「ジャケットを見立てるのに准尉について来て欲しいってことですよ」

「別に俺じゃなくても…」


そこまで言いかけると、ブレダの掌が目の前に突き付けられる。
呆気に取られ言葉を止めたファルマンに、重ねるようにしてブレダが言葉を載せた。


「ハボがなぁ、“ファルマンの見立てはシックでいいよな”って言ってたぜ」

「おまっ…!」

「照れんなよー!」


ブレダの首を締め上げるハボックに対して、ファルマンの顔に僅かに赤みが刺したのはフュリーと―――窓際からこちらを見ていた二人しか知らない。


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