煌神羅刹

□Plaisir de Noel
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 街はイルミネーションに彩られ、まさにクリスマスムード一色だ。
 聖誕祭というものを勘違いし、無駄に騒ぐこの日を司馬懿は好ましく思っていなかった。





……去年までは。





「…遅い」


 日も暮れかけて気温が徐々に下がり始める夕方、司馬懿は新大阪駅に居た。




 ボスである曹操の粋な計らいで、12月24日と25日の両日に休暇を貰えた…と言うよりは、取らされたと言う表現が近い。それはもう曹操の下心が見え見えで、現在長期のシノギで大阪に居る夏侯惇と休みを合わせたらしい。
 司馬懿は『有り難い話だが…』と丁重に断ったが、大阪行きの新幹線の日付指定切符を握らされて、これは強制イベントだと悟ると溜め息を吐く事しか出来なかった。


『24日と25日、そっちに行く事になった』


 司馬懿は自分のデスクに戻り携帯のメール作成画面を開き、簡潔に文章を打つと夏侯惇へ送信する。
 直ぐにマナーモードにしている携帯が震え、返信が届く。


『待ってる』


 司馬懿は、素っ気ない返事だが『実に彼らしい返事だ』と思い、思わず顔を綻ばせた。
 その瞬間を曹操に発見され、からかわれたのは言うまでもない。





 24日の当日、司馬懿は大阪に向かう新幹線の中で『水族館に行きたい』と夏侯惇にメールを打つと、『わかった。新大阪まで迎えに行くから、着いたら連絡してくれ』と言う返事が返ってきた。
 司馬懿は新大阪駅に着くと、夏侯惇に連絡を入れ、一泊二日の荷物を入れたトランクに腰掛けて待つことにした。





 そして、話は冒頭の「…遅い」という台詞に戻る。



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