煌神羅刹
□Plaisir de Noel
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「見て見て!ジンベエザメのイルミネーションの尻尾が動いてる!!」
この時期、海遊館周辺は、日が落ちるとイルミネーションに彩られる。海遊館の建物には光のクリスマスツリーが作られ、入り口に繋がる階段にはジンベエザメやイルカが作られている。
「ほぅ。見事なもんだ」
「可愛い…」
やっぱり女の子だな。
目を輝かせながらイルミネーションに見惚れる司馬懿を見て、夏侯惇から思わず笑みが零れる。と同時に、この姿が見れるのが自分だけだと実感する。
「何が可笑しい?」
「いや。何でもない」
入場券を買って館内に入場する。夕方五時以降は少し照明が落とされ、昼とはまた違った顔を見せてくれる。
昼には活動的な住人は安らぎの顔を、活動しない住人は活発な顔を見せてくれる。
「ぬいぐるみみたい…」
司馬懿の目の前の水槽にいるラッコも、仲間たちと戯れて疲れてしまった為か、今は愛くるしい寝顔を見せている。
ラッコの寝顔を暫し堪能し、海獣類や熱帯魚が泳ぐ世界の海の水槽を後にすると、メインの日本の海を模した巨大水槽に辿り着く。
「ジンベエザメ!」
司馬懿が目を輝かせてへばりついている巨大水槽のメインは、やはりジンベエザメだ。現在は二匹が優雅に泳いでいる。
「ほぅ。見事なもんだ」
「二匹もいると、迫力も違うものだな」
巨大水槽を右手に順路を螺旋状に進んでいくと、他にも色々な生物に出会う事になる。
夏侯惇は子供の様に目を輝かせて、水槽を見て回る司馬懿を微笑ましい目で見守っていると、司馬懿の動きが止まった。
「どうした?」
どうしたものかと思い、夏侯惇が司馬懿に近付くと、何かに怯えた様な顔で水槽から顔を背け、近付いてきた夏侯惇の後ろに隠れて水槽と距離を取る。
「く…蜘蛛」
「蜘蛛?」
水槽内を見れば大小様々なタカアシガニが、長い足を広げて鎮座していた。
「俺には蟹に見えるが」
「シルエットが…」
「最初の沢ガニは平気だったろう?」
「あれは足が短いから、まだ見れる」
足を広げると3メートルもあるタカアシガニは、クモガニ科に属しており何とも言えない足の長さが蜘蛛を彷彿させる。
蜘蛛嫌いが怯えるのも無理はない。
「無敵の計略を張り巡らす参謀も、随分と可愛い部分がお有りで」
「五月蝿い…」
余程恥ずかしいのか、顔を赤くし頬を膨らませながら怒る司馬懿を見て、夏侯惇は自分の頬が緩むのを実感せずにいられなかった。