夏祭り

□夏祭り B
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「ま、何でもいいが・・・少しは気を使え」
「はーい」

増子のツッコミを今度はへらりと受け流す。

「それにしても人が増えてきましたね。あいつらここ分かんのかな?」
「うむ・・・なんせあいつらだからなぁ・・・」

日が沈んでいくのに合わせて、どこからともなく人が増えてきて、御幸と増子は邪魔にならないように通路の隅に移動した。
気をつけて歩かないとすぐに誰かにぶつかってしまいそうな密度の中、増子と適当な会話を交わしながら駆けて行った二人が戻って来るのを待つ。
待っている間に一番近くのアイスの屋台でそれぞれ昔ながらのアイスを買った。そのコーンをかじりながら御幸は、何で夜店のアイスはコーンがピンクや緑なんだろうとぼんやり思っていた。
それにしても遅いなぁ、あいつら・・・。

「あ、すいません。・・・あ!」

帰ってくる気配が無いかと通路の真ん中まで出ようとした時、御幸は誰かにぶつかった。
反射的に謝って顔を上げるとそこには見慣れたひげ面の、いかにも柄の悪そうな人物が立っていた。

「純さんじゃないですか。なんですか、その格好?」

そこに立つ伊佐敷は祭りらしく甚平姿だった。
濃いグレー地に白の縦縞の入った薄手の甚平を纏う彼は、いつもより少し大人っぽく見える。
甚平はそもそも、きちんと着こなせなければだらしなくパジャマのように見えてしまうものだが、伊佐敷はその難しい衣類を見事に着こなしていた。
マジマジとその姿を御幸が眺めていると、居心地が悪かったのか伊佐敷が

「ジロジロ見んな、バカヤロー!」

と御幸を小突いた。

「いや、純さんキマッてるじゃないすか!ね?」

御幸が叩かれた頭を大袈裟にさすりながら増子に同意を求めると増子もうんうんと頷いていた。
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