夏祭り

□夏祭り B
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「お前らも来てたのか」

気まずい空気も気にせず(と、言うか読めていないのか)結城がたこ焼きを片手に亮介の後ろからひょいと現れた。
結城はベージュっぽいシンプルな浴衣を身に付けている。もともとベージュという柔らかい色にグレーの縦縞は実に控え目で、一見無地にも見えるそれは、黒い角帯にキュッと引き締められとても品がある。
それを、いつも背筋をピンと伸ばして姿勢のいい結城が悠然と着こなしているのだ。格好良く無いわけが無い。
通りすがりに結城に視線を送る女性が多いことに気付き、御幸は「さすが哲さん!」と妙に納得した。
さらに、そんな視線にわざとかと疑いたくなるほどまったく気付かないところも「さすが哲さん・・・」と大いに納得した。

「まさか、お前・・・御幸と?」

結城の登場で緊張の解けた伊佐敷が増子に問う。
まだこめかみあたりに冷や汗と思われるものを滲ませていることには触れないでおいてあげようと御幸は思った。
伊佐敷はの言い方は、そのあまりにも不自然な組合せをありえないと思いながらも、その場にいたのはその二人だったのでとりあえず問うてみましたという感じだ。

「そんなわけなかろう。俺は沢村ちゃんとだ」

増子が瞬時に否定する。その反応に御幸は「俺って一体・・・」と心の中でちょっと落ちる。まあでも俺と増子先輩の組合せってのもあんまり無いと言えば無いか、と何とか自分でフォローしておいた。

「子守か。お父さんは大変だな」

伊佐敷がしみじみ頷いた。

「で、その沢村は?」

亮介の問いに、増子は御幸にちらっと視線を向けた。引き継いで御幸が答える。
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