藤堂平助追悼

□意地っ張り
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「お前、何やってんだ!?」
「大丈夫です! 少し豆が潰れちゃっただけで……」

笑顔を作って再び木刀を握ろうとするが、顔は辛そうに歪みそれを手から取り落としてしまう。

「お前ばっかじゃねえの!?」

思わず駆け寄り、手首を掴んだ。その細さに驚きながらも手の平を見ると、皮が破れ血が滲んでいる。そのような傷は幾つもあり、練習の激しさを物語っている。

「あの、私本当に大丈夫ですから……」

怖々と口を開く平助を歯牙にもかけず、左之助はさっさと手当てを行った。不器用そうな見た目に反していとも簡単に布を平助の手に巻き付けていく。武道の心得があるものならばできて然るべきものである。平助はそれを申し訳なさげに見つめている。そして無言の時が過ぎる。蝉の声がより一層五月蠅くなった。
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