藤堂平助追悼

□意地っ張り
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「少しは年長者を敬え!」
「ごめんなさーい、おじさーん」
「こいつ……っ、調子乗るなよ! オレがどれだけ面倒見てやったか!!」

肩を震わせる左之助を平助は楽しげに眺める。そして口を開いた。

「覚えてるよ、左之さん」

そう言って平助はやはり楽しそうに笑って手の平を左之助の目の前に突き出した。その手はマメができては潰れる、の繰り返しで硬くなっており、もはや手に傷を作ることすらない。日々の鍛練の結果である。

「左之さんももっと鍛えた方がいいんじゃない?」
「オレは大器晩成なんだよ!」
「いつ出来上がるんだろうね」
「うっせえ!!」

二人の高らかな笑い声が響く。

あの時と同じ、蒸し暑い昼下がりのことであった。
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