藤堂平助追悼
□甘えん坊
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「平助、入るぞ」
突然の訪いに驚きを隠せない。しかもその声の主は、
「新さん! えっ、なんでいるの!?」
新八は平助の部屋には入り込み、枕元に腰を据える。
「いや、見回り中に親指の傷が開いちまって、もう帰れって言われたんだよ」
「えっ! 大丈夫なの新さん!?」
「お前には言われたかないな」
確かに、新八の手に巻かれた布には赤いものが滲んでいるが、明るい様子からもわかるように大事には至っていない。
「じゃあ何しにきたの?」
「ああ、部屋にいたのはいいんだがあまりに退屈で。平助も退屈してんじゃないかと思ってな」
体を起こしていた平助の肩を押して布団に戻らせる。平助は素直に夏用の薄い掛け物に身を潜り込ませた。新八に向けられる目は喜びからきらきらと輝いている。