藤堂平助追悼
□甘えん坊
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「俺はいいんだよ。お前の方が重傷なんだから、そろそろ寝ろ」
「はぁい」
今度は素直に頷いた。手をどけると、目は閉じたままである。頬を伝う汗を手拭で拭ってやる。
「あ、そうだ。じゃあ」
「却下だ」
「まだ何も言ってないよ!!」
「どうせろくなことじゃないだろ」
「ただ新さんに子守歌を」
「絶対歌わないから!」
平助は不満そうに「左之さんなら歌ってくれるのに」などとブツブツ言っている。新八は子守歌を歌う左之助の姿を想像して笑いを噛み殺した。
平助に目を瞑らせてしばらく黙って団扇で扇いでやっていると、喧しい蝉の声に混じって規則正しい呼吸音が聞こえてきた。頬をわずかに緩ませ、瞼を開ける様子もない。