藤堂平助追悼

□淋しがり屋
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いい月夜だ。
伊東は縁側に腰掛けて空を見上げ、しみじみと呟いた。冷たく冴え渡る空気が、望月から後は欠けてゆくばかりの月をよりはっきりと見せる。
手にした器の液体を一口二口と飲み下す。体の中心からほんのりと暖かくなった。

「伊東さん、何してるんですか?」

後ろから響いたやや高めのよく通る声が夜の闇を明るく照らした。振り向くと、予想通り伊東の弟子であり仲間である藤堂平助が立っていた。伊東が「おいで」と手招きすると平助は嬉しそうに近付いてきた。
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