目指せ普門館!?〜私立麗凰高校の挑戦〜

□1.capo【カーポ/伊】
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「…どうして引き受けちまったかな…。」




梅雨の晴れ間の6月。
戦いの場では誰もが恐れる全身兵器の死神は、とある高校の正門前に佇んだまま情けない顔をしてため息をついた。


半月前。
ギルモア邸にコズミ博士が訪ねて来た日から彼の運命は変わった。












昼下がり、自室で本を読んでいたアルベルトの元に博士二人がやって来た。
何事かと驚く彼にコズミ博士は更に驚くべき事を言ったのである。




「久しぶりじゃな。
ハインリヒくんは…音楽に造詣が深いと聞いたが、いかがかな。」


「お久しぶりです、コズミ博士。
確かにピアノはやってましたが昔の事です。今はもう…。」


「そうか。しかし楽譜は読めるのかな?」


「それは一応。」


「それなら大丈夫じゃろう。ひとつ頼まれてくれんか?」


「一体何の話なんですか。」




一向に話が見えず困惑するアルベルトにコズミ博士はにこやかに言った。




「実は儂の教え子が高校の教師をしていてな、この春吹奏楽部の顧問になったそうなんじゃよ。」


「はあ。」


「しかしそいつは音楽なんかからきしダメでなあ。楽譜も読めん。
それで困って儂の所に相談に来たと、こういう訳じゃ。」




リビングに場を移して、コズミ博士は茶を啜りながらニコニコして言った。
アルベルトは嫌な予感がしながらもコズミ博士に切り出した。




「…で?コズミ博士の教え子と俺とどういう関係が?」


「そこでじゃ。コンクールのある8月までハインリヒくんにコーチを…」


「冗談じゃないですよ。お断りします。」




コズミ博士に皆まで言わせずアルベルトはピシャリと断った。




「まあそう頭ごなしに断らずに…。コズミくんの話を聞いてやってくれんか。」




大概予想通りとは言えアルベルトの態度にギルモア博士が口を挟んだ。
アルベルトは立ち上がりかけた腰を不承不承ソファに沈める。




「…分かりました。話だけは聞きましょう。」


「おおそうか聞いてくれるか。えーと、どこまで話したかな?」


「俺にコーチを頼みたいって所までです。」




うんざりとアルベルトが言う。

コズミ博士はうんうんと頷いて話し始めた。




「その高校の吹奏楽部というのが…こう言っては何だが弱小でなあ。
今年結果を出さないと予算削減、最悪廃部という事態らしいんじゃよ。
かと言ってあやつでは指導も何も出来ないと泣きついてきてなあ…。」


「俺が行ったところで変わらないと思いますがね。」


「まあそう言わず、一度現状を見て考えてくれんかのう。」


「頼むハインリヒ。
コズミ博士には…そりゃあもう世話になっとるじゃないか。
恩返しと思って、な?」




ギルモア博士にも拝み倒されてアルベルトは断る術を失った。




「様子を見に行くだけですよ。手に負えないと思ったらすぐ辞めさせてもらいますからね。」




苦虫を噛み潰したような顔をしてアルベルトはコズミ博士からの頼まれ事を承諾した。




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