短編集
□予行練習!?(004)
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金木犀が香る午後。
私はフランソワーズに頼まれてイワンを散歩に連れて行くことになった。
「えーと、オムツにタオル、着替え、あと水分補給に白湯も持って行って。」
「うん。けっこう大荷物なのね。」
「“お母さん”は大変なのよ。イワンなら手が掛からないから予行練習にもってこいじゃない?」
ふふ、と笑ってフランソワーズが荷物の入ったバッグを渡してきた。
イワンをベビーカーに乗せて、けっこうズシリと重いそれを肩に掛けた。
「お、散歩か。」
「アルベルト!ちょうど良いところに!
一緒に行きましょう。荷物持って♪」
「…俺は荷物持ちか。」
ちょうどリビングに顔を出したアルベルトを私はすかさず捕まえた。
私が荷物を渡すとアルベルトはしぶしぶながらもそれを受け取った。
「じゃあ行ってきまーす。」
「気を付けてね。行ってらっしゃい。」
フランソワーズに見送られて私たちは歩き出した。
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