グレ期

□プレゼント
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「あれ超可愛かったー!俺も欲しいー!!」

飲み歩いた帰り道、酔っ払って鉄男の腕に絡まるミッちゃんが言った。

時は今日の昼間までさかのぼる。鉄男がパチ屋で出してると聞き、行きたいと言うミッちゃんに学校ふけて皆で押し掛けた。(勿論着替えて。)奇跡的に集まった全員が大なり小なり出ていて、その中でも鉄男の出した1箱を分捕ったミッちゃんが腐る程出していた。
そんなワケで祝賀会。ミッちゃんが『欲しい』と言うのは、何軒かハシゴし、最後にいつも行く知り合いのあっちゃんのバーで見た、彼女からのプレゼントだと言うブランドもののライターの事を言っていた。

「お前タバコ吸わねーだろ。」

そう言う鉄男含めここにいる全員が百円ライター組だ。

「んー。でも欲しい。なんかオシャレ。」

ブランド名だけでも相当なモンだったがミッちゃんがそう言うなら値段だけでも見てあげたい。なんてったって来月はミッちゃんの誕生日なのだから。





家に帰って携帯をピコピコいじって冷や汗をかいた。超高ぇ!!ライターってこんなすんの?!高校生が買う値段ではない。ライターごときと思うから尚更だ。さすがミッちゃん…高嶺(高値)の花。でも無理すればイケなくはない…。パチンコ勝って良かった。腹を括ったつもりではいるが他のものに興味を魅かれてくれる事を祈らずにはいられなかった。





次の日二日酔いで学校をサボったミッちゃん。終わってから鉄男の家に行っても鉄男しかいなかった。あれ?

「三井は?」

暫くして俺と同じ事を言いながら竜が来た。行方不明なんだって。携帯も電池切れてるっぽいし。

「そのうち帰って来んだろ。」

鉄男が言う間に本人帰宅。なんと昨日言っていたブランドの真っ赤な袋をブラ提げて。…マサカ…。

「買っちゃったぁ。」

青くなる俺等の言わんとする事が分かったらしく、袋に頬擦りしながら嬉しそうに笑った。昨日あれだけ勝ったミッちゃんなら買えるかもしれない。しかし後先考えない人だ。少しほっとしたような寂しいような。そんなに欲しかったならやっぱり買ってあげたかった。

「使い道がねーじゃねーかよ。」

呆れる竜に、ぐいとその袋を鉄男の前に差し出した。

「うん。だから鉄男に。」

…え?

「今月誕生日じゃなかった?」

…ええぇぇぇ――――ッッ?!!!

度肝を抜かれた。鉄男の誕生日だっつーのも『え?そーなの?』くらいには驚いたけどそこじゃない。

「――バ…っカじゃねーのッ?!」

竜に同感。

「だって鉄男のって俺のみたいなモンじゃん?」

元々金や物に頓着しない人だがここまでくると心配になる。鉄男だからかもしれない…と言うのはあまり考えたくない事だから。

「な、早く開けて。見せて。あっちゃんのより可愛いよ。」

ソファーに座る鉄男の脇に座り身体を寄せて覗き込む。厳重に包装された小さなライター。全面にブランドロゴが掘られているテカテカ光るシルバーのボディー。可愛いはずだ。好みもあると思うけど。昨日見たのより数万高い。いや、気持ちって金じゃないけどさ。額が額でしょ。

「点けて。」

武骨な指で横滑りのほんの小さな石を回した。

「な?」

無邪気に笑い、ミッちゃんのライターが鉄男のものになった瞬間胸が掻き毟られた。

「似合わねー。」

またも竜に同感。これは嫉妬ではなく本当に。『鉄男っぽく』はない。

「んん?当たり前じゃん。俺イメージだろ?」

確かに。ミッちゃんが欲しかったものだしね。
いつも一緒にいる二人は二個一みたいなとこがある。鉄男の脇にミッちゃん。ミッちゃんの脇に鉄男。そう考えると、ミッちゃんイメージのライターを使う鉄男って言うのも、案外似合うのかもしれない。

「んで誕生日いつだったの?」

聞くミッちゃんに鉄男はぼそりと「今日。」と呟いた。

「嘘ぉ?!超ぴったし!じゃあケーキ屋行こっ!」

鉄男がケーキ屋…。ぐいぐい腕を引くミッちゃんに少し困った様子で答える。

「いい。食わねーよ。」

「バカ!俺が食いたいの!こーゆーのって気分じゃん。なぁ、買ってぇー。すっからかんになちゃった。」

「………。」

そう言われたのでは重い腰も上げざるを得ない。

「まぁーるいヤツな。」

自分の誕生日に自分のケーキを自分の金で自ら買いに行く鉄男を、俺は羨ましそうに見送った。




:::::

END


三井Birthdayに見せて実は鉄男。しかしその様子をフルシカトwww
勝手に4月にしてしまいましたが鉄男の日なるものがあるそうですね。10(テン)2(ツー)0(オー)?違うかwww


 

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