グレ期
□徳男道
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鼻を啜る俺の脇で鉄男は溜息を吐き、ミッちゃんを抱えたままソファーに腰を下ろした。
「どこにも行きゃしねーだろ?」
鉄男の言葉にミッちゃんはゆっくり顔を上げると、潤んだ大きな瞳で鉄男を見詰めた。その瞳を鼻先10cmの距離で見上げる鉄男。それを見る俺。
「………。」
「………。」
「………。」
「あぁ―――ッッ!!!!」
「えッッ?!」
突然のミッちゃんの叫び声に驚き、咄嗟にその指差す方を振り返った。
俺の後ろは玄関だ。泥棒でも来た?!――…誰も来てない。じゃあ何?キッチン?洗濯機?他に何がある?!
忙しなく眼球を動かし舐める様に辺りを見回すが異変を見付けられない。
えぇ?何?どこ?分かんない。……あれぇ?もしかしてこれって、騙されちゃった的な…?
向き直ると鉄男に抱き付き、くすくすと笑うミッちゃんがいた。
やっぱりー!やだなー。ミッちゃんたら可愛い。
口元をおさえそっぽを向いている鉄男はなぜか耳の端が微かに赤い。んん?そんなに面白かった?
「徳男超バカー!」
笑うミッちゃんに俺も頭を掻いて笑うと、風呂場に行くすれ違い様に俺の頬にぎゅっと唇を付けてきた。
どぅわ―――――っっ?!!!!
今度こそ本気で頭から湯気が出た。
「鉄男―。バスタオル取ってー。」
ミッちゃんの声にバスタオルを掴む鉄男の頬には紅葉マーク。俺には……ブハッッ!!
果てしない優越感に悶え、床を転げ回りクッションをボコボコにするのに忙しく、俺は風呂場に消えた鉄男が優に一時間戻って来ないのに気付かずに、たっぷりとミッちゃんを遅刻させてしまっていた―――
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END
うぅっ…。鉄三具合がお分かり頂けたでしょうか…?ドキドキ。