NOVEL*カラスミ

□こたつ日和
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 冬と言えば、「鍋」「こたつ」「みかん」とあまりにもお決まりな事を呟く臨也は案外、保守的な人間なのかもしれない。と、静雄は先日、居酒屋に行ったときにあらためて思った。
 普段、誰がそんな事を思いつくんだ!と言いたいようなとんでもない事をする臨也だが、確かにバレンタインにはチョコをよこし、ホワイトデーにはマシュマロをねだるようなテンプレートな人間だったりもした。
 そんな、ところをかわいいと感じるのは自分の恋人いう欲目だろうが…まぁ、それを他人にべらべらと語るような事を静雄はしないので誰にも迷惑をかけていないし、問題はないのだが。
 とまぁ、臨也はそんな事を居酒屋で延々とつぶやいていたもんだから、こたつはうちにないから用意できないが、鍋とみかんくらいは実現してやろうか…と週末にうちに来るという臨也のために、静雄は仕事帰りにハンズで土鍋を買い、そのままスーパーに寄って鍋の具材を買いに来ていた。
 まずは鍋の味を決めないと…とスーパーのあつあつ鍋フェアなんて書かれた突き出しエンドにたどり着いた静雄はまずその種類の多さに驚いた。
 沢山積まれた鍋の出汁のパックを左から順番に見ていくと、チャンコに、塩、チーズ、キムチ、豆乳、ゴマ、カレー、コラーゲンと色とりどりだが似たようなパッケージが並んでいる。
 店内に流れる放送ではキムチ鍋がオススメらしいが、あいにく、俺はそんなに辛い物が好きじゃないし、臨也も「辛さ競ってなんになるんだろうね」なんて激辛料理を鼻で笑うような奴だから参考にはならなかった。チャンコ鍋なら自分でレシピをみれば作れそうだし、他に挑戦して見たい味は…とまた左からパッケージに目を通してたどり着いたのは豆乳鍋だった。
 あっさりした味とまろやかな口当たり…うん、美味しそうだ。
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