Theme*NOVEL
□《ろ》ロマンチストの夕べ
1ページ/1ページ
オレンジ色に染まる教室。
その窓際に二つの影。
そっと大きな影が小さな影に触れ、ゆっくりと一つに重なった。
俺は少女漫画を読まないけれど、妹達が一時期ハマって俺に無理矢理勧めてきたことがあった。
そういったベタベタのラブストーリーの漫画にはこんなシーンがあったような気がする。
「じゃあ…また明日。」
触れていた唇が離れると、照れたように顔を伏せて彼女はそう言った。
「あぁ。明日。」
少し高い位置から彼は彼女に優しい視線を送り、不器用な声で言った。
彼女が教室を出てくるので、俺は一応、さも今ここを通りかかっただけです、何も知りませんという風を装った。
いくら俺でも他人の青春の一ページを邪魔をしようっていう趣味はないからね。
「…ドタチンはロマンチストだね。」
教室に顔を出すと、一人残った大きな影―門田京平に声をかけた。
「おまえ、覗いてたのか。そういう趣味は感心しないな。」
頭をぽりぽりとかきながら説教じみた声でそう言った。
こういう時って、顔を真っ赤にしながら怒るか、照れるかが正しい反応なんじゃないかな。
と俺は思ったけれど、こんな大人びた反応が彼らしかった。
そこら変の同級生のように喚きたてたりしない、冷静な部分を持ち合わせていドタチンの性格が俺は気に入っていた。
「悪かったよ。」
へらりと俺は笑った。
「どうぜ、青春のっぽいとか笑いにきたんだろ。」
「そういう性格の悪いところがお前らしいよ」、とドタチンは小さな声で続けた。
「いいや。悪くないんじゃない」
俺は近くにあった机に寄りかかった。
「めずらしい。お前が人を褒めるなんて。」
「嫌いじゃないよ、でも俺には向いてないみたいだ。」
誰もいない廊下側を見つめながら俺はそう言った。
―ドダドタドタ…!!
その先から近づいてくる尋常じゃなく激しい足音。
「いーざーや ー!!!!」
サッカーゴールでも壊してきたのだろうか。
手にはひしゃげた鉄パイプを持った静雄が教室のドアをぶち壊す勢いで姿を現した。
「静雄!」
ドタチンは最初からキレてるシズちゃんにそう声を掛けたけれど、もうシズちゃんには聞こえていない。
「じゃぁね、ドタチン。」
ひらりと手を降って、俺は校舎の二階の窓から飛び降りた。
「ノミ蟲〜!!」
シズちゃんの怒りに満ちた声が静かな放課後を切り裂いた。
----------------
あまあまも悪くないよね、と思いながらもシズちゃんに激しく攻められたいドM臨也 (えっ?)
なお話でした。
担当:こしゃむ