短編 甲

□お遣いと浴衣と酒と花火と
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【旧地獄行き道中】





『美鈴もパチェの用事で一緒に行くでしょうから、ついて行ってあげて』


館の吸血鬼はメイドに命じ


『咲夜もレミィの用事で一緒に行くでしょうから、護ってあげなさい』


図書館の魔女は門番に頼んだ



『『あそこは物騒だから』』



旧地獄への買い物を







お遣いと浴衣と酒と花火と








地下に広がるかつての地獄、旧都


その外れにある外壁の上方に開いた、地上と通ずる横穴に人影が二つ


「熱いわね」


「暑いですね」


紅魔館のメイド十六夜咲夜と、同じく門番紅美鈴


これから赴く買い物先を前に一息ついていた


「しっかし、懐かしい雰囲気ですね〜」


「…どこが?」


木製の建物がひしめき合い、生活の匂いが熱気に煽られ、妖怪同士が騒がしく接する街を見下ろす


「私が前にいた街もこんな感じでしたから 活気があって」


「ふぅん…」


目敏いメイド長は視界の端で酔っ払った妖怪同士が掴み合いの喧嘩をしているのを見つけてしまい、眉を潜めた


「こんなスラム…」


「え?」


「何を買うよう言われたの?」


「ッはいはい、これですね、え〜〜……えぇ?」


門番はメモ用紙を取り出して読み上げようとするが笑顔が止まり、無表情になり、難しい顔で唸り出した


「貴女は分からなくていいの」


メモ用紙を取り上げると、確かに美鈴には馴染みの無い素材の名前が並んでいた


「パチュリー様がお嬢様のお使いに合わせたのはその為でしょう」


「…???」


「私が頭で、貴女が身体」


咲夜はメモ用紙を自分の買い物リストと同じ所に仕舞った


「荷物持ち、任せたわよ」


「あ、咲夜さ〜ん…!」


やおら街に飛び降りた咲夜を美鈴も追った
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