短編 甲
□庭を愛でる者
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【???】
縁側に腰掛け、私はその庭を眺めていた
緑に覆われた土
水の滴る木々
底まで透ける川の水
心地良いそよ風
高い様ですぐ近くにある空、広い様で近くに揺るがない大地
春の暖かさも、夏の熱さも、秋の涼しさも、冬の寒さも 探せば姿を見せてくれる
皆、私が作った
外の世界なんて大嫌いだった
ゴミと喧騒と怠惰と、下らない理由のいがみ合いが不快で仕方無かった
かと言って、家の中も嫌いだ
自分以外誰もいない、何も変わらない家の中は窮屈で仕方無かった
だから私は、庭を作った
外の汚れも内の閉塞感も無い、爽やかで開放的な庭
来るべき客人を招き、共感を得られた者だけが居られる隠れた箱庭
時間や義務に追われる事の無い、ただただ生きる事を愛で、自身を自分たらしめられる場所
さぁ、庭へいこう
木や花達に会いにいこう
渇いていれば水をやろう
くたびれていれば支えてやろう
折れていれば癒してやろう
咲き乱れるなら見送ろう
在らざる客は殺してやろう
この楽園を末長く続け、愛し続ける為に