短編 甲

□Alcoholic Palsy
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赤ワイン

血の様に赤い事から紅茶と並び吸血鬼も好んで呑んでいると言うが


やっぱり本物程じゃないなぁ、と 本物の血を見ながら場違いな感想を抱いてしまったのは



やはり、私が酔っていたからだろうか





Alcoholic Palcy





【旧都:勇儀の部屋】





「ッ……!!」


星熊勇儀の笑顔が凍りついた


(……)


座布団の上で胡座をかいていた勇儀が抑える額は右側から血を流し、普段の白い上着は肩から赤紫やら赤茶色に染まっている


(……?)



そんな勇儀を見下す形で正面に立つ女は酒瓶を握り締めていた


(……え)


私の為にと買い、結局受け取らずに勇儀の部屋の隅を占領した全身を映す縦長の鏡に映るその女は、大層醜悪な顔をしていた




私…水橋パルスィだった


(……!!)


一度下を向いたであろう瓶の口から血の様に真っ赤なワインが溢れ、手と瓶を滴っていた


「ッ!!ゆ…!?」


夢見心地から覚醒し鏡から勇儀に振り返れば、額の角が床を削った跡を残して横向きに倒れていた


「ちょ、勇ッ……」


……


「……ッ!!」


開け放たれた戸口から「逃げるな」と言わんばかりに喧騒と熱気が吹き込んで来るが、それに逆らい闇夜に飛び出した
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