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□黄昏と千歳
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『いやー、晴れてよかったねー』
「ホンマやなー、晴れすぎて鬱陶しいくらいや」
『お前のそのスマイルがなー』
「・・・」


落ち込むな落ち込むな。
謙也を見ろ。後輩に罵られても元気にやっとるやろ?


「謙也さん、部長がマネに虐められてるっスわ」
「何してんねん!」
『ちょ、うち何もしてないし!つか、いつも虐められてるんうちやし!』


こんな時ばっかり仲よくなんなや。
いっつも仲悪いくせに・・・。


「そういや千歳遅いなー」
「そっすね。まー千歳さんやし、仕様がないんじゃないっすか?」
『えー、折角海来たんに・・・』


何だ、つまらん。
千歳も来る、言うから態々来たんに・・・。


「まーええやろ。ほら、俺バレーボール持ってきたんや!やるで!」
「それって顔面OKですか?」
「お前完璧俺に当てる気満々やろ」
「当然、」
「ざーいーぜーんー!!」


皆がワイワイ騒ぐなか、うちは何所か上の空だった。
千歳は言わばうちの精神安定剤。
居ないと落ち着かない・・・。




「おーい、帰んで」


もうそんな時間か?
水に濡れるとまずいので持って来なかった腕時計を恨めしく思った。


『(来んければよかった・・・)』


皆と居るのが嫌なわけではない。
ただ、千歳が居ない、と云う事実に耐えられない。
アイツが居るからうちの日常が成り立つ・・・って言っても過言じゃないだろう。


「あれ?あんでかい人は・・・」


''でかい''
その単語に思わず振り向いた。


「あー、居った、居った」
『・・・千歳・・・』
「すまんたいねー、つい忘れとったたい」
「大丈夫よん。千歳はんなら何でも許すで」
「浮気か!殺すで!」
「いやん、怖い」


千歳だ。
本物の。


「おや、水着たいね」
『・・・』
「よう似合っとーばい」
『・・・来ないかと思った・・・。』
「はは、俺も最初は来るかどうか迷ったばってん・・・」
『?』
「お前さんが居る思って来たたい」
『えっ?』
「お前さん、むぞらしかけん変な虫が付かんか心配やったけんね」
『む、むぞらしか?』
「可愛いって意味たい」
『あ、可愛いね・・・可愛い?!』
「何ね?顔赤くして」
『いや、いや何でも無い・・・』
「あ、そうそう」
『ん?何?』
「好きたい。お前さんが・・・」


何でこのタイミングなのか激しく謎だったけど、取り敢えず喜んで良いんだろうか?
夕日をバックに微笑む千歳を、見ながら思った。




黄昏(たそがれ)

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