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□泣く千歳
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『千歳はさ、何で笑うの?』
「お前さんに悲しい顔見せたくないから」
『何で優しいの?』
「お前さんと居ると優しい気持ちになるから」
『じゃあさ、何でテニス辞めたの?』
「お前さんと一緒に居るため」
『嘘、付くの下手だね。』
「あひゃ、ホントね?」
『うん』
「残念」
『千歳が嘘付くの下手だって分かった記念にもう一個教えてあげるよ。』
「ん?何ね。」
『大阪、行くんでしょ?』
「・・・なんで、わかったと?」
『おばさんが教えてくれた…のもあるけど、最近様子変だったから。』
「・・・あいひゃー・・・・・・」
『言わないで行くつもりだったでしょ?千歳の事だから、』
「ごめんたい。」
『いいよ、別に…』
「・・・」
『・・・』


あまり心地良いとは言えない風が私たちを包んだ。


『いいよ、何時ものことじゃない』
「引き止めては、くれんとね?」
『引き止めたら…行かないの』
「…」


大好きだった。凄く。
きっとこの世で一番千歳の事愛してた。

でも、千歳は自由人。

何時までも私の元には居てくれない。

風と一緒。
直ぐに手元から消えて行ってしまう。



『行かないで…って言ったら、泣いたら、行かないの?』



そんなの無理。
千歳は何言っても行くよ。



『だからさ、笑顔で送ってあげるよ。私、いい女だからさ。』
「・・・」



どうして千歳が泣きそうな顔してんの?
さっき、私に悲しい顔させたくないから笑ってるって言ったばっかりじゃん。


『私、千歳のこと何時までも好きだからさ。行って来なよ、誰も咎めないよ。』
「…ごめん・・・たい…。」





私の肩に顔を乗せ、泣き出した千歳。


なんだ、自分ばっか泣いてんじゃねーよ。
私だって泣きたいんだから…さ・・・。



笑うだけ、無駄。
(風を捕まえる事が出来たら、どれだけ幸せだろうか?)




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