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□意地っ張りな財前
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私の好きな人は、とっても意地っ張りだ。
そんなもんだから、なかなか結ばれない。
片想い歴は、あいつに出会ったのは小学校に上がる前だったから確か…そう、8年以上。
いや、誤りがある。正確に言えば、両思い歴だ。
あいつは、私のことが好きだからだ。絶対に。


だけど、肝心なあいつは余程の意地っ張なのか、私に告白する素振りを見せない。


私に魅力がないのか?いやいや、あいつは私のこと好きなんだ。ってことは、私から魅力の一つや二つは感じていると考えていいだろう。


告白する場所になんらかのこだわりがあるのか?いや、家が隣同士の私たちは、ほぼ毎日のように一緒に帰って、かなりの確率で晩御飯を一緒にする。流石にこれだけ一緒にいれば、告白の機会の一つや二つあってはおかしくないはずだ。



「なんでよ……光。」

「なんか言いました?」

「……なんでもない。」



意地っ張りかなんか知らないけど、これじゃただの苛めだよ。光。
私は早く、あんたの口から「好き」って二文字を聞きたいよ。
他の誰でもない、私に対する言葉を。



「あぁ、そうやった」

「なに?」



突然、思い付いたように口を開いた光。
普段、光の方から喋りかけてくることはあまり無く、うちらの登下校は、うちがひたすら喋り続け、時折光が突っ込むという形だった。
そんな光が、自分から私に話しかけてきた。
どことなく、期待してしまう自分がいる。あぁ、ついに、ついに!


「俺、明日から彼女と帰るから」

「……はっ?」

「いや、俺こないだ彼女が出来たやろ?んで、彼女が煩いんですわ。なんで、彼女じゃなくてただの幼馴染みと帰るんか?って」


彼女が…、いた。
いや、そんなことよりも、’ただの’幼馴染み……。その言葉が一番胸に刺さってきた。
いや、分かっていたはずだ。そんなことは。たいした進展も見せないまま、ここまで来た。
それじゃあ’ただの’なんて言われても反論なんか出来ない。
だけど、これだけは確かなはずだった。


財前光は、私が好き。


思い上がりではないはずだ。いや、はずだった。
だけど、どうだろう。光は、私ではなく、他の女の子を選んだ。
それは、つまり、


財前光は、私が好きではない。


ということになる。
いや、待って。これは、あれだ、押してダメなら引いてみろ。そうだ。きっとそうだ。
光は、私が光のことなんとも思ってないと思って、賭けに出てるんだ。
なんだ、そっか。さすが意地っ張り。


「あ、のね、光」

「なんですか?」

「変なこと聞くけど、彼女のこと……好き?」


これは、私からの賭けだった。光は、私のことが好き。
「そんなわけないでしょう?俺が好きなんは、あんただけです」そう、言ってくれる。
だって、だって…っ!


「大好きや」


あぁ、なんだろう。この感じ。
全てを失ったような、心に穴が開いたような。私自信を否定されたような。
ずっと、ずっと、光だけを見て、光は私を好きなんだって信じてた。



「そっか、はは、そうだよね。好きだから付き合うんだもんね。うん、そうだ…よね。」



頭が真っ白になる。自分がなにを言っているのかいまいちよく分からない。



「ちょ、どないしたん?」

「えっ…」



気が付けば、大量の涙が頬を伝っている。
悲しいって、心が叫んでる。あぁ、失恋って悲しいんだ。



……今になって分かるんだ。
慣れない大阪に引っ越してきて、初めて優しくしてもらったのが光で、それで好きになった。
それからは、幼馴染みって立場を良いことに油断してた。
光は、私のもの。どこにも行かない。
そうした結果がこれ。


あぁ、分かったよ。
意地っ張りだったのは、光じゃない。



私自身だったんだ。





会話文だけじゃないぜ!私はw
だけど、久しぶりのせいか、あまり(いや元々だけど)纏まりがない。
恋には、素直になることが大事…だと思います。
よく分からないんですけど。

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