Long


□5歩
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「4センチ?」

「そっ。4センチっ! 男っポくなっただろっ?」


体育の授業のマラソン中、平が突然そんな事を言い出した。 
服の袖をめくり上げ「このキンニクが見えない?」などと万里に二の腕を見せつけている。


「だって平。 オレらの身長差ってまだまだ20センチ以上もあるのよ。
…それに、まだ名前よりも低いじゃん」




   4センチの奇跡




万里の的確なツッコミにも動じない平。

いくら4センチ伸びたからといっても、まだまだ平均的な男子の身長よりも低いことに変わりはない。 
しかし、どこからそんな余裕が出てくるのかと言いたくなるほど、今の平は自信に満ち溢れていた。


だが、さすがに平も名前より身長が低いのはかなり気がかりなようで、語尾が段々小さくなっていく。


「20センチなんてすぐだよ。 …それに名前なんてあと2センチちょっとで追いつく」

「甘いな平。オレ達は同じ15歳。 おまえが伸びるって事はオレや名前も伸びる」

「わかんねーぞ。おめえ伸びねえかもしんないじゃん」


どうしても万里や名前を追い越したい平。
万里達も同じ成長期だと言うのにそれを認めようとしない。


(まぁ、それほど身長のことについて悩んでるってことか…)


平が身長のことを気にしているのは知っている。 そのために毎日努力もしていた。


「男っポくなりたい。」 


それが平の悩み。

そして今、平同様に万里自身もあることに悩まされていた。


先ほどから平と話している最中に、万里はある一角から聞こえてくる声に耳を傾けていた。


「おい。あっちに苗字がいるぜ」

「相模と一ノ瀬と3人並んでたら絵になるよなぁ」

「ホントホント。何か苗字美人度アップしてねぇ?」


男達の目線の先には、相模と一ノ瀬と楽しそうに話をしている##NANE1##の姿。

これが最近の万里の悩みだったりする。

 
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