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□1歩
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「花島田もああ言ってるし苗字さん 男バスのマネージャーをやれば?」

『えっっ!?』

「おおっ!さすが女子バスケ部キャプテン 話がわかるな!!」


意気投合しながら盛りあがる東一中学バスケ部キャプテン2人。
その当事者である名前は、話の展開についていけず、口を開けたまま固まってしまっていた。


「じゃあ、私そろそろ教室に戻るわ。」


名前が固まっている間に話は終わったのか、女バスのキャプテンはスタスタと自分の教室に帰ってしまった。


「では明日から、マネージャーの件頼んだぞ」


そう言ってさっさと自分の教室に戻ろうとする花島田。その彼の腕を掴み、少し怒り気味に声を出す。


「私、男子のマネージャーになるなんて言ってない!」

「そうだったか? しかし女バスのキャプテンは了承していたぞ?」

『2人で勝手に話を進めてただけでしょ。』


花島田の理不尽な言葉に、もはや怒りを通して呆れてきた名前。 花島田も引く気はないらしく言葉を続ける。  


「しかし名前が入部すれば日下も…っ!!」


すると急に言葉を途切れさし、しまったという顔をする花島田。

彼に疑問を持った名前は、じ〜〜っと彼の目を見る。 
すると花島田は焦ったように不自然に目を背けた。


『……万ちゃんが何?』

「いや…その……。とにかくだ!頼むっ! マネージャーになってくれ!」


バツが悪くなったのか「頼む!」と両手を合わせ、とうとう頭を下げて頼み込んでくる花島田。
いきなりの行動にどうしたものかと考え込んでいると、


「ジュース2週間おごる。」


悪魔の囁きが聞こえてきた。
 
その囁きに名前の眉がピクッと動く。

それに気づいた花島田は口元を少し上げ、さらに誘惑の言葉を続ける。


「3週間!いや1ヶ月おごる!!」


これでどうだと言わんばかりに言葉を投げかける花島田。


まぁ、男子でもバスケ部に変わりはないし、小学校からの付き合いでもある花島田の頼みだと内心承諾する気もあったのだが、何故かこの男の策略にはまっているような感じもする名前。

何よりその策略に幼なじみが関わっている気もしたが、『おごる』と言う悪魔の囁きに気を取られ、考えても仕方ないと名前は了承の意を口にしてしまった。


『わかった。マネージャーするよ』

「そうか!じゃあ、明日からよろしく頼むぞ!」


名前の言葉に下げていた頭を上げ、嬉しそうに顔を綻ばせる花島田。 
その笑顔にさっきまで悩んでいたことがバカらしくなり、心の中で頑張ろうと決意を新たにする名前。
 
そうこうしていると、タイミングよく休憩時間の終了のチャイムが鳴り、花島田と名前はそれぞれの教室に戻っていった。

 
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