Long
□4歩
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何かイヤな予感がする。
『あの時』と同じ大切な人が目の前から消えていってしまうような……。
「まぁ。あとたった半年だしここにいるの。
高校行きゃこいつも諦めるでしょ。
だから名前も心配しないで?」
いつもの調子で話しかけてくる万里。
その表情は名前を安心させようとしている顔で。
正直まだ納得はしていなかったけど、そんな顔をされては何も言えなくて。
名前はただ頷くしかなかった
だが、名前のイヤな予感は早くも的中することになってしまった。
その日の英語の授業、3−Dの教室に悲鳴が響き渡る――
「キャ−−! 日下くん、手っ!!」
悲鳴のした方を見ると何やら万里が手をおさえているのが見えた。
その手のひらはザックリと切れ大量に血が流れ出ていて。 だけど当の本人はケロリとした表情でそれを見ている。
だけど、机に出来た血の跡がどれほどヒドイ傷かを物語っていた。
万里は先生にすぐさま保健室へと連れて行かれ、彼のいなくなった教室はしばらくの間騒然としていた…
『っ万ちゃん!!』
「よっ、名前。」
勢いよく保健室のドアを開け、ベッドの上で横になっている万里の元に駆け寄る。
あれから先生が戻ってきて授業は再開されたが、一緒に戻ってくるはずの万里の姿はなかった。
先生に聞けば、彼はそのまま保健室で休んでいると言われて、心配で授業終了と共に平を引き連れて急いで万里の所へとやって来た。
「万里−。 調子こいていつまで寝てる気だ−?」
「ん−? だって次体育だろが−、ったり−」
『ケガ大丈夫なの? かなり血が出てたけど…』
「大丈夫大丈夫。 傷も出血のわりにゃたいした事ないし」
そう言ってケガをした手をプラプラさせて見せてくる。
万里は大した事はないといったけど、包帯を巻かれている手を見て名前は気が気じゃなかった。
何故か今朝のあの紙を思い出す。
あの言葉が頭から離れない……。
『万ちゃん。…そのケガどうやって切ったの?』
「それがオレにも…」
万里が言うには、机の中の辞書を取ろうと手を入れた時に切ったのだと言う。
もちろん、そんな切れ味のいいカッターなど持っていないと。
「そりゃおまえ、あれだ。」
「なに?」
「カマイタチ」
「シメころ−す」
そうやってじゃれ合い始める平と万里。
2人を見つめながら、名前は1人ある決意を固める。
だが、そんな3人を余所に攻撃は段々エスカレートしていくとは、この時誰も思ってもいなかった…。