Long
□5歩
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万里が自分自身の気持ちを自覚してからというもの、何故か周囲の男達の名前への好感度もアップしていた。
元々名前の人気は高かったのだが、あからさまな形で彼女に好意を示す者は少なかった。 (…影の人気は相当高かったが。)
だけど近頃は、名前に近づく男達が日に日に増えてきているようで。
噂では、別のクラスの男子が名前に告白する気だとのウワサも流れてきている。
(これじゃ気が抜けない…か)
彼女を渡す気はさらさらないので、悪い虫は早めに退治しておかなくてはいけない。
だけど…今彼女に自分の想いを伝えても、きっとそれは届かないだろう。
早く自分のモノにしたい。
そんな想いが胸の中にあるのに、それに比例するように彼女が悲しむ顔は見たくないと別の想いが邪魔をする。
矛盾だらけの自分自身にどうしたらいいかもわからない。
どうしたものかと考えていると、前方で平が誰かに突き飛ばされ体育用具に突っ込んでしまった。
「いって−−っ!!」
「大丈夫か?平」
片手を挙げて涙目になりながらも大丈夫だと言う平。
そのことに安堵しながら平を突き飛ばした本人に詰め寄る。
「待てよ!おまえ今ワザと」
その男の腕を掴み問いただそうとしたが、男は腕を振り払いそのまま逃げるように去って行ってしまった。
******
「な−んて事があったんだよ」
『それが平ちゃんがケガしてるのと怒ってる理由なんだ』
あれから学校も終わり、今は万里の家で明日が期限の宿題を3人で済ませている。
だがずっと平の機嫌が悪く、いたる所にケガをしていたのを名前が心配し、その理由を聞いてきたので万里は今日あった出来事を掻い摘んで一通り説明した。
「その平を突き飛ばした奴、確か3-Bの梨野だっけ」
「オレ別に何もしてないよ」
『どうしてそんな事したんだろ?』
梨野という男に突き飛ばされる覚えはないという平。 顔もあまり覚えていないらしい。
しばらく3人でそのことについて考えていたのだが、名前が突然話題を変えていつのまにか話の方向は梨野という人物から平の身長のことについて変わってしまった。