]-Story
□不思議の国の神田
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体が枯葉の山の上に落ちた拍子に枯葉が乾いた音をたて舞い上がった。服や頭についた枯葉をはらいながら立ち上がって辺りを見まわすと明るい昼間の森だった。教団の森ではなさそうだし、この場に来た覚えなど全くない。そもそも自分が何をしていたかも覚えていない。まさかアクマと闘っていて、どこかに飛ばされた、または幻覚…とにかく混乱している頭を落ち着かせなければいけないと神田はひとまず歩き回ってみることにした。同じところにいても解決しそうにはなかった。
「どうなってやがる」
『クスクス…』
「誰だ!?」
突然聞こえた笑い声。六幻を抜いて、声の聞こえた木の上を見た。神田と同じくらいの年の女の子が木の枝にだらんと横になっていた。笑う女の子が着ている濃いめの灰色のワンピースが森の緑の光を浴びる。髪も灰色で艶があってむしろ銀といったほうがいい。大きな瞳は吸い込まれるような青だった。
「てめぇは誰だ」
『チェシャネコ』
「ふざけてんのか」
『おや?白ウサギが走ってくる』
草を踏む小さな足音が近づいてくるのがわかった。しかし、ウサギにしては大きな足音だった。そして段々と白ウサギの正体がわかってきた。
「ウサギって…ウサギだが」
思わず六幻を落とすところだった。神田より少し小さいくらいの大きさの二足歩行の真っ白なウサギ。上等なジャケットを着て、そのポケットに入れている懐中時計で時刻を確認した。ピンクの大きな耳を揺らして走りながら独り言を言っている。
「ああ!!困った!!遅刻してしまいます!!」
神田には目もくれず、ウサギは走っていってしまった。今見たものが信じられずに神田は固まったまま。
「なんだアレ…」
『白ウサギだね』
「俺の知ってるウサギはあんなにでかくないし、喋ったり服も着ないし時計も持ってない」
チェシャネコと名乗った女の子は枝に横になったままで首を傾げる。でも顔は笑ったままだ。敵意なんて微塵も感じられないので抜いた六幻をしまった。
『ウサギは歩くものだよ』
「歩かねえよ。歩くっつうより跳ねるだ」
『キミの言ってるウサギはきっとウサギではない』
怒鳴る気力も失せてきた。きっとこの女には話が通じない、これが神田が出した結論だ。とりあえず、喋っているんだから話はできるはずの白ウサギを追いかけることにした。
『白ウサギを追うのかな?』
「ああ」
『向こうに白ウサギの家があるよ』
向こうと言われ、森の奥に目を凝らした。確かに小さく家が見えた。意外に話が通じるかもしれないと他にも何か聞こうとチェシャネコを見た。目を擦ってチェシャネコをもう一度確認する。
『また会おうじゃないか』
チェシャネコの体が消え始め、向こう側の緑の葉が透けて見える。チェシャネコ本人はそのことに驚いてはおらず驚いているのは神田だ。
「おい!!どこに行く!!」
『公爵夫人が女王さまのところに行ったのさ』
答えがずれている気がするがそのままチェシャネコは姿を消してしまった。
舌打ち、結局どうするかって白ウサギを追いかけるか、話の通じるものを探すしかなさそうだ。まずはここがどこだか把握しなければならないだろう。
『そうそう』
「!!?」
神田の目の前に逆さまにチェシャネコの顔がいきなり現れた。驚いて足を一歩引いた。チェシャネコは枝に足を引っかけてぶらさがっていた。静かに消えたのだから現れるときも静かに現れてほしい。
『君の名前を聞き忘れたよ』
「か、神田だ」
『そうかカンダ、それだけ聞き忘れてね』
再びチェシャネコは消えた。この森に来て一時間もたっていないのにかなり疲労した。
そして、頭の中でチェシャネコのことが引っ掛かっていた。始めて会ったはずなのに知っているような気がしていたが思い出せない…。止まっていても仕方ない、と神田は白ウサギの家へと歩きだした。
ふと足を止めて考える。
「夢…か?」
左の頬をつねってみた。力いっぱいに頬をつねる…痛かった。
*****
あとがき
始まっちゃったね【不思議の国の神田】
実はこれはですね、仲良し管理人の氷華サマのとこの掲示板で会話をしていて出てきたものです(どんな会話だ)
んで、乗り気になって本格的に書き始めちゃったんですな〜、ハハハ〜!!ごめんなさい。
でも、真面目に書きますよ〜("∀")