その2

□くれないに揺れる残り火
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「もう君一人だよ」
 
男の言葉の通り、その場に立っているのは二人だけ。
広い大地には、紅い血を溢す死屍が累々と転がるばかり。
 
『っ…いくら弱小マフィアだからって、たった一人に壊滅されるとは思わなかったわね』
「君のボスが薬に手を出したりするからでしょ」
 
血塗れた地に伏せる物体は、男が一人で作り上げた物だった。
圧倒的な力を持つ男はボンゴレの守護者の一人、凡百のマフィアが勝てる相手などではない。
 
『まさか、こんなに弱いとは思わなかったなぁ…』
 
もう一人の人間が足元にある既に事切れた物体をコツリ、とブーツを履いた足で軽く蹴った。
つまらなそうに、でも何処か寂しげな表情で仲間だった物を眺める。
 
「君は他と違って強いね。
君が居なかったら興ざめも良い所だったよ」
 
屍の山を作った男は、返り血の滴る己の武器を手にニヤリと笑む。
もう一人の人間が双剣を持つ手に力を籠めた瞬間、二人の人間はお互いに向かい走り出す。
 
ギィンッ、と金属同士が鋭くぶつかり合い独特の音を響かせる。
 
男は実に楽しげに己の武器を振るう。
右の攻撃を相手が武器で防げば、すぐさまもう片方の武器を相手の右脇腹に叩き込もうと動く。
 
もう一人は男の攻撃を正面から受けず、衝撃を上手く流す事で腕力の不足分を無くす。
男の二撃目は左足を軸に回転して躱す。
その儘勢いを利用し、受けずに躱した事で空いている右手の武器で男を狙う。
男はそれを読み強く地を蹴る事で回避した。
 
武器を振るい武器で防ぎ、切り返されれば躱し、近付いては離れを幾度と無く繰り返す。


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