その2

□くれないに揺れる残り火
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「雲雀さん」
 
自分の上司(気に入らないけどね)の部屋に入るといきなり名前を呼ばれた。
 
「何、綱吉」
 
あまり無駄話をする趣味は無いから、短く用件だけを聞く。
いつもの事だから、相手も気にした風には無い。
 
「少し頼みたい事があるんですけど」
「命令でしょ」
「まあ、そうなんですけどね」
 
綱吉は少し苦笑しながら机の上にあった書類を渡してきた。
拒否権なんて無いんだから、初めから命令だってはっきり言えば良いのに。
 
「最近勢いが付いてきたマフィアなんですけど、麻薬に手を出したらしくって…」
 
渡された書類にサッと目を通していたら綱吉がそう言う。
そのマフィアも馬鹿な事をしたな、ボンゴレは麻薬を嫌うからね。
 
「今ボンゴレは忙しいし、勢いが付いてきたとは言っても弱小の部類に入るマフィアなんで、雲雀さん一人で行ってくれませんか?
本来は幹部が出向く様なモノでも無いんですが、疲れてる部下が多いので。
後、一人だけ強い人が居るらしいですよ」
 
話と書類の内容からして、殲滅の任務らしい。
結構無茶を言うようになったよね。
僕は一人でも構わないけど。
それにしても、会う度に交渉が上手くなってる気がするよ。
 
「ふーん、本当に強いんだろうね。
つまらなかったら承知しないから」
 
それだけ言い残して綱吉の部屋を出る。
強い奴と戦うのは楽しいから、自然と笑みが込み上げる。
…どんな奴が相手だろう。
 
 
 
 
そう楽しみにして行ったのに、来てみたら雑魚ばっかり。
興ざめも良い所だね。
 
そう、思っていた。
 
『無闇に近付くな!
タイミングを計って確実にダメージを与えろ!』
 
戦場に似つかわしくない女の声。
的確に自分の部下へと指示を下す。
 
…アイツはきっと面白い…。
 
見ただけでそう分かる。
纏う空気や殺気の流れ方。
明らかに他の雑魚とは違う強い奴。
鍛えられ洗練された、静かで穏やかな殺気。
綱吉が、守護者の中でも僕を選んだ理由が分かった。
偶には綱吉も気の効いた事をするね。

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