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□その体温が
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だめだよアル。アルフォンス。そんな目でオレを見るな。オレはお前を拒めないんだ。
わかるだろう、母さんを錬成しようとしたあの日から、オレはお前に命だってやれるんだ。お前に真剣に望まれたら、オレは何も拒めない。――お前の体温を、お前のすべてを愛しいと思えてしまうオレには。



お前がいないことに耐え切れなくなったのはオレのほうだった。
イヤな夢を見て、目が覚めて、お前がいなくて、怖い。お前はちゃんと身体を取り戻しているのに。
アルは大丈夫、アルは大丈夫、何度も自分に自分で言い聞かせる。そして望んでしまう。少しでいいんだ、声を聞きたい。姿を見たい。あの体温を、少しだけ。

それと同時に、こんな状態でアルの近くに戻ってしまったら、オレはもう一生アルから離れられないとも思う。きっと『少しだけ』じゃ治まらない。
お前の幸せの為なら何でもするし、何でもできる。その気持ちに嘘はないのに、なぜオレはこうなんだろう。

だからこのままこうして離れているうちに、お前と別々に生きていく、まっとうな兄弟として生きていく為の理由を完璧に構成する材料をはやく揃えて、きちんと形にしなければならない。

アルフォンス、早く連絡を寄越せ。寄越してくれ。愛する人ができたと、生涯を共にする人ができたと。
そうすれば大丈夫。きっとオレたちは普通のまともな兄弟になれる。そんなフリはいくらだってできる。
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