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□その体温が
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アルの身体の熱を感じるたび、オレは動けなくなってしまう。
目を閉じてそのままゆっくりと、お前が暖かいというこの現実を、どこまでも味わいたいと思ってしまうんだ。
…こんなふうに思うなんて、どうかしているな、オレは。
でも不安なんだ。まだまだもう少し、お前が身体を取り戻せたことを心の底から信じられるようになるまでは。
「兄さん」とよぶ声に、お前の笑顔や驚いた顔、怒った顔がついてくる。吐息も。鎧のころだって、お前が今どんな顔をしてるかなんて判っていたけど、本物の威力は半端ない。嬉しくてたまらない。
オレのせいで、あんなに長い間、表情を浮かべることすら出来なかった弟は、オレを恨むことなく一緒にいてくれる。しかも自分も同じ罪だという。お前は何も悪くないのに。
どうしてアルはオレを許せるんだろう。
どうしてアルはオレの手足を元に戻したいと言ってくれるんだろう。
オレはお前を何度も命の危険に晒したのに、なぜお前はオレから離れないんだろう。
オレだってお前から離れられないよ。
お前といるのが、暖かすぎて、嬉しすぎて。理由をつけて、いくらでも。
この気持ちが行きすぎているという自覚はあるんだ。でも、もう少し。――お前がオレから離れるまでは。
オレは、そう思っていたのに。