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□知らない感覚
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あごから口にかけて水に浸かった感じがした。次に口に水が入ってきて溺れそうになったので、俯いていた顔を急いで上げた。すると、唇が少し固いところにあたる。さっきからずっと頬に触れているのは誰かの肌だ。固いところは、きっと骨が出ているところ。骨…鎖骨か。鎖骨だ、アルの。

重たいまぶたを開いてみる。オレはたぶん泣きじゃくったのだと思う。目のまわりが腫れぼったい。
「気がついた?」
耳と身体の両方から声がした。
触れているのは頬と唇だけじゃなかった。身体まるごと、裸で、オレは湯船のなかで抱きしめられている。―――アルに。

オレはどこを見たらいいのかわからない。また目を瞑ると、まぶたにそっと口づけられた。思わず身を竦める。
「大丈夫?ごめんね、我慢できなくて、急に色々しすぎちゃった。」

がっ、ががががまんできなくてとかいいやがったかこんにゃろう!
あまりの恥ずかしさに身を捩ると、バスタブの底の足が滑って、オレは湯船に沈んだ。
「ぐぼーー!!」
「ああ兄さん!危ないなあ、何してるんだよもう。」
アルが今までより強い力で抱き止めてくれる。よりハッキリしたアルの肌の感触に身体が震えた。

頭のなかに色んなアルが出てくる。さっきまで、居間のソファの上でオレを見ていたあの眼差しや、息づかいまでありありと。
そしてオレの身体は反応してしまう。
待てオレ!待てってオレの身体!!
オレは再度身を捩りながら、手のひらで隠そうとしたがダメだった。
「兄さん?…思い出しちゃったの?」
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