12/20の日記

16:49
おわんふたたび
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さっきの店で食ったでっかいエビは、シチューみたいなソースがかかっていてメチャクチャうまかった。
そのあと出てきたちっさい肉も柔らかくて味が濃くて、脂自体がうまい肉ってこういうことかと良くわかった。

そして今は、原っぱ一面に広げられた電飾を見ている。電飾・・・イルミネーションと言うのが今風か?


「兄さん、どう?ちょっと足を伸ばした甲斐があったでしょう。」

「ああ、すげー規模だな。設営にどんだけ時間かかってるんだ?」

「…ちょっと、キレイだとかの感想は無いの?」
アルがとなりでため息混じりにぼやく。

「ちょっとはムードをだすこと言ってよ兄さぁん。せっかくのクリスマスなんだから。」

そう、クリスマス。さっきのレストランも、この電飾原っぱも、カップルばっかりだ。
全くどいつもこいつも。
「アル、お前はいつからクリスマスに踊らされる奴になったんだ。そもそもクリスマスっつうのはな、」
「シっ、兄さん。」

説教垂れてやろうとしたオレの口はアルの人差し指に塞がれた。

「そこは大目に見てよ。あのね、ぼくにとっては絶好の機会なの。美味しいお店が特別な料理を出すから好きな人と食べに行きたい、街がキレイに飾られるから、好きな人と歩きたい。」

「・・・・」

「好きな人に似合いそうなものを見つけたから、プレゼントしたい。この時期はね、兄さんと過ごすのにもってこいなの。」

そしてオレの首にふわりとマフラーが巻かれた。柔らかく暖かい。暗いから色味がイマイチわからないが、 コイツの見立てなら間違いない。
去年まで使ってたオレのマフラー、毛玉だらけで捨てちまったの気づいてたんだな。

「待て。オレはお前に何も用意してねえぞ。」
「いいの。ぼくがあげたかったんだから。・・・ねえ兄さん。これからもずっと一緒にいてね。」
・・・まいったな。暗いからか電飾の効果なのか、微笑むコイツがちょっと寂しげに見えちまう。・・・仕方ねえ。オレは手ぶらだ、やるしかねえ。

次の瞬間、オレはアルの頬をガっとつかんで引き寄せ、なかば頭突きって勢いでキスをかましてやった。さらに勢いで余計な一言も言ってやる。

「ふはははは、一緒も何もオレの粘着力ナメんなよ!剥がそうったってそうはいかねえぜ!」

アルは呆気に取られてオレを見た。ちくしょう恥ずかしい。オレは何を

「・・全くもう、だからムード出してって言ってるでしょ。」

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