お題用

□穢れ合った、汚れ合った。
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 学校帰りにちょぴり寄り道をして帰ろうと思っていたアリエルは、校門に立つ男を見て驚いた。
 知った顔だが、なぜわざわざ彼がここに居るのか理解できなかった。
「よぉ」
 ずれた眼鏡を押し上げながら彼は声を掛けてきた。
「な、なんであなたがここに?」
「お前の制服、ここの夜間部のだろ」
「……ちょっと、ハンターさん、ハンター辞めてストーカーに転職したの?」
「ちげーよ!」
 アリエルは驚きのあまり妙なことを口走った自覚はあったが、それでも、彼がわざわざ学校にまで来る理由がわからなかった。
「ちょっとな、協力してくれねーか?」
「ヴァンパイアの情報ならあげないわよ」
 アリエルはぴしゃりと断言する。
 仲間の情報は売らない。ヴァンパイアの一族の名誉にかけて誓う。
「いや、情報はもうそろってる。だが、中々姿を現さないヤツでな。お前に囮になってほしい」
「はぁ? オトリぃ?」
 ふざけてんのかこのカスがっ! くらいはいってやりたかったがぐっと飲み込む。
「どういうこと?」
「実は、お前くらいの年頃の女が大好物なモンスターがいてな。ここ一月くらい探してるんだが……野郎一人じゃ姿を現さない。一応、知り合いの女にも頼んだんだが……年増は好みじゃないらしい。出なかった」
 目の前の男、ヘルシングは髪を掻き上げる。
 綺麗なプラチナブロンドは少しうらやましいとさえ思う色だ。
 透き通って時折銀にも見える。
「それで、獲物は?」
「ルー・ガルーだ。丁度お前がヤツの好みに一致する」
「あのねぇ、私は君の相棒じゃないのよ?」
 アリエルに得はない。一歩間違えれば化け物の餌食になる。なのにこの男は協力しろと言うのか。
 アリエルはさっさとその場を去ろうと背を向ける。
「それで、場所なんだが……」
 話を続けた彼の言葉にアリエルは耳を疑った。
「え? うそっ……」
 彼が口にした場所は遊園地だった。丁度今、ハロウィンイベントをやっている。
「それ、ホント?」
「ああ。オレがヤツを探している間、お前は好きに遊んでいていい。まぁ、オレは付き添いの保護者を装えばさほど違和感はないだろう」
 入園料も奢ると彼は言う。
「ホント? あそこ、今ハロウィンイベントやってて限定アクセの販売があるんだよね。蝙蝠デザインの可愛いヤツ。わーっ、ハンターさん大好きっ」
「……モンスターがハンターに懐くな! お前、すぐ誘拐されそうだな……」
 ヘルシングは深い溜息を吐く。
「まぁいい。どうせ寄り道するつもりだったんだろ?」
「うん。アイス食べてちょっとショッピングしていかにも怪しい占いの店寄って帰るつもりだったんだけど、ラッキー。ハンターさんが遊園地連れてってくれるなんて思わなかった」
「あくまで仕事だ。忘れるな」
「別に私は蝙蝠のネックレスとリングを買えれば満足するわ。あとブレスレット。もしかしたらジーグとおそろいにできるかも」
 アリエルは上機嫌でヘルシングの腕に抱きつく。
「こら、くっつくな」
「あら、いいじゃない。一緒に遊園地行くんでしょ? こっちの方が自然よ。機嫌がいいから、今日はサービスしてあげる」
「……お前なぁ……いろいろ誤解を招きそうな表現は止めろ」
 ヘルシングは唸り吼えるように威嚇する。
 アリエルは聞こえないふりをして、しっかりとヘルシングの腕を抱いた。
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