お題用
□知っている世界
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私の知っている世界は電気コードと苦痛にまみれたデータが全ての世界でした。
目覚めてからと言うものの、私には眠りと言うものが存在しません。
だから、私は博士の眠っている間に研究員の目を盗んで様々な資料を入手しました。
私にはデータが全てなのです。
私が一番初めに興味を持ったのは人間の「ファッション」というものでした。
なぜそれが必要なのかはわかりませんが、博士から沢山の衣服を渡された覚えがあります。
博士曰く「人間に紛れ込んでモンスターを捕らえるために必要なものだよ」とのことです。
なので私はより、人間に紛れ込めるように沢山の資料を入手しました。
そこで知ったことは私の髪は人間には存在しない色らしいと言うことでした。
肌の色は比較的白人に近いと私は思っていますが、やや白すぎるようです。ですが肌はそれほど問題ではありません。
問題はやはり髪です。
この色を日本では藍鼠と呼ぶそうですが、人間にはまずありえない色のようです。
博士にそのことを訊ねたら「今時染めてる奴は多いから平気だよ。細かいことは気にしなーい。それより早くダンピールの可愛い子捕まえてきてよ」と言われるだけで、それ以上は何も情報は入りませんでした。
次に私が知ったことは、研究員達の言葉にありました。
人間の中では博士のことを「変態」や「ロリコン」と呼ぶそうです。
ですが、試しに博士をそう呼んでみたら高圧電流を流されました。理不尽です。
そして、初めて研究所を出るときに知ったこと、研究所で最後に知ったことは、私だけが成功作であり、多くの兄弟は失敗に終わり、生きたまま焼却炉に放り込まれているという、目を覆いたくなるような事実でした。
それと同時に、私の中にほんの僅かにある蠢きを感じたような気がしました。
そして、地上に出たとき、地上は夜でした。
夜というものはもっと暗いと考えていたのに夜は人工的な照明で随分と明るく、何やら期待を裏切られたような気分です。
そして、そこで、焼却炉から逃げ出した兄弟たちに出会いました。
ここで漸く、私は自分の中にある「感情」というものに気がついたのです。