お題用

□目に見える違い。
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「よぅ、また会ったな」
 意地悪い笑みを浮かべて銃口を向けるのはヘルシングだった。
「レディのショッピングを邪魔するのは間抜けなハンターさん? 悪いけど君の相手をするほど暇じゃないんだ」
 アリエルはそう言って靴屋の店先に並べられたセール品のサンダルを見比べる。
「随分余裕だな」
「うん。死なないから」
 アリエルは白いレースアップフォームのスタックヒールを手にとって見る。
「うーん、黒の方がいいかな?」
「……本気で買い物に来たのか?」
「それ以外に何があるのよ」
 アリエルは呆れてヘルシングを見た。
「何度も言うけど私は忙しいの」
「一人で買い物に来てか?」
「う、うるさい!」
 アリエルは思わず鞄でヘルシングを殴った。
「このっ……クソガキが!」
「きゃーここに変態がいるー助けてーって大声で叫んでもいいけど?」
 アリエルは無表情でそう告げるとヘルシングは忌々しそうに彼女を睨みながらも黙った。
「あー、ヘルシング、折角だからアンタ、買い物に付き合いなさいよ」
「は?」
「どうせ暇なんでしょ?」
「なっ……俺ほど仕事熱心なハンターは居ない! 俺が暇なはずあるか!」
「んー、じゃあこれで」
 アリエルは何やら手帳から紙を取り出す。
「なんだ? これは」
「最近動きが怪しいモンスターのリスト。お仕事欲しいんでしょ?」
 赤いヒールを見つめながら彼女は言う。
「動きが怪しい?」
「うん。だって、共存方法教えてるのにも関わらず、その子達の周りでばかり人間が消えるんだもの」
 さして興味なさそうにアリエルは言う。
「お前……本当にヴァンパイアか? こんな昼間に外出歩いてよ」
「だから違うって言ってるでしょ? 私はダンピールなの」
「日光は平気だと?」
「まーね。日焼け止めが必需なのは美白ブームのせいよ」
「ヴァンパイアに美白は必要ないだろ」
「そうね。色黒の方がモテるわよ? あんたもう少し焼いたら? 白過ぎよ?」
 アリエルは迷いに迷って黒いレースアップフォームのスタックヒールを手にとって店員に渡す。
「そこまで迷うなら全部買えば良いだろ」
「あのね、私は学生なの。それ相応の買い物の仕方ってあるでしょ?」
「月の小遣いは?」
「カードだからわかんない」
 彼女が言うとヘルシングは溜息を吐く。
「ヴァンパイアもクレジットカードを作れるのか?」
「まーねー」
 店員から袋を受け取り店を出るアリエルを彼は慌てて追いかける。
「さぁて、次はサマードレスを買おうかしら」
「……ヴァンパイアが?」
「たまには露出を楽しまなきゃ。ねぇ、人間って、夜も暑さを感じるのかしら?」
「夏は暑い」
「そう。ほら、行くよ。私の服を選ぶのを手伝わせてあげる」
「頼んでない」
 ヘルシングは迷惑そうに言うが彼女はそんな言葉は聞こえないと言わんばかりに先に進み、すぐ近くにある若い女性層に人気の洋服店に入り込んだ。
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