お題用
□目を開けたら
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ミカエラは強い女性。
だって「何を恐れることがありましょうか」なんてホセに言えてしまうのだもの。
それに比べて私って臆病よ。
なんてカルメンのDVDを見ながら思う。
そう、私は臆病。
何に怯えているのかさえ分からないほどに臆病で、一人でいるのが寂しくて堪らない。
「ジーグ、出かける?」
肩に乗った相棒に声を掛ければ首に頭を擦り付けてくる。
甘えん坊め。
ジーグの頭を撫でて外に出かける支度をする。
いくらダンピールとはいえ、満月が近い今帽子なしで外を歩くのは少しばかりきつい。
何せ夏だ。日差しが一段と厳しい昼間の紫外線とか言う奴は大敵だ。
「まったく、誰よ、紫外線なんて作った奴」
命に別状は無いとは言え、人間と違って日焼けなんかしない。いや、日に焼けると本当に醜いやけどになってしまう。
それが嫌で、日差し対策は怠らない。
ファニーが作ってくれた大きな麦藁帽子を被って、白いワンピースを着る。
少しだけ視覚が涼しくなった気がする。
「ジーグ、行こうか」
兄さんたちは眠っているこの時間はやりたい放題だ。
お財布と、ジーグの水筒を持って、玄関へ駆けると途中ファニーとすれ違う。
「どちらへ?」
「ちょっとお散歩」
「いってらっしゃいませ。お早いお戻りをお待ちしております」
「ええ」
返事をしたところで、ファニーは思い出したようにいう。
「クッキーがありますが持って行かれますか?」
「うん。ジーグも食べれる?」
「ジーグには別に用意させていただきました」
少々お待ちくださいと、深く頭を下げ、ファニーは厨房へ行ってしまう。
数分もしないうちに、二つの可愛らしい包みをくれた。
「青いほうがジーグの分です」
「ありがとう、行ってきます」
晴れた日に外に出ないなんて損だとオスカーに言われたことを思い出す。
生憎太陽とはあまり仲良くなれそうには無いが、真夏の虫の音は少しばかり心を躍らせる。
「ジーグ、森林公園に行こうか」
声を掛ければ嬉しそうに首に頭を擦り付けるジーグ。
久しぶりにゆっくりと過ごせそうだ。