お題用

□悲鳴、に、ぞくり。
1ページ/2ページ


 夜の街には人には見えない何かが蠢いている。
 それは大概モンスターの類であり、人を闇に引きずりこむ。
 連中を消去するのが俺の仕事、であるはずなのだが……。

「何をしている?」
「遅いじゃない。先に頂いちゃったわ」
 ヴァンパイアの娘。
 モンスター側に居ながら、人に危害を加えるモンスターを消滅させる。
「おー、対魔物の銃なんてよく手に入れたな」
「作ったのよ。自分で」
「ほぅ」
 たいした魔力だ。
 少し驚く。
 目の前のヴァンパイアはどう見ても自分と十以上離れた『少女』だ。
「まったく、君の本業でしょ? なんで私が駆り出されなきゃいけないほどモンスターが跋扈してるのよ」
「お前のその対称だろうが」
「あら〜? そんなこと言っていいのかしらン? モンスター出現場所リスト、私持ってるんだけど?」
「はぁっ? なんでそんなモン……」
 上級ハンターだって作るのに苦労するのに、なんで作れるんだよ。このヴァンパイアは。
「私の情報網嘗めないでよね。蝙蝠たちを使って情報収集してるんだから」
「いかにも、って感じだな」
「手伝いなさい。半分あげるから」
 そう、彼女はあっさりと紙の束をよこした。
「って……なんだよこの量……」
 リストの紙はA4サイズ。それが週刊誌より厚いというこの量に驚かずにはいられない。
 しかもこれで半分なのだ。
「私が倒した分は線を引いてあるわ。貴方が倒した連中にも線を引いといたら? 後々楽よ?」
「リストにお前とその仲間は入っていないんだな」
「当然でしょ。人間に危害を加える馬鹿のリストなんだから」
 呆れたように彼女は言う。
「最近キリムが暴れているわ。気をつけて頂戴。アレは一人じゃ相手したくないわ」
 お腹を空かせているのねと彼女は言うが、キリムが動き出したとなればそんな言葉じゃ片付けられない。
 街一つ滅んでもおかしくなかろうに。
「ハンターさん、君じゃ無理だ」
「お前と一緒にするな」
 強がってはみたが、正直なところ、七つの頭を同時に相手する自信はない。
「じゃあ、キリムは譲ってあげる。変わりにセイレーン頂戴」
「頂戴って……物々交換かよ」
「まぁね」
 彼女は笑う。
 こうしてみると本当に人間にしか見えないから不思議だ。
 彼女にはヴァンパイア特有のあの禍々しい空気が無い。
「しぃっ」
 突然彼女に静かにしろと身振りで示される。
「何だ?」
「悲鳴」
 彼女が耳元で囁くように言う。思わずぞくりとした。
 人間ではない。
 まるで脳に直接響くようなそんな感覚だ。
「噂をすれば、か?」
「みたいね」
 悲鳴のしたほうに駆ける。
 だが、モンスターの気配は無い。
 代わりあったのは人間の姿だった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ