***sTorY***

□卒業式
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卒業式が終わって、屋上で土方さんと並び手摺りにもたれて
俺はぼんやりと空を見上げていた
しんみりした空気になる事もなく
ただただぼんやりと


「なぁんか呆気なかったですねィ」

「そうだな。」


土方さんは時折こちらをチラチラ見ながらタバコをぷかぷかとふかしている


「やっぱりまだ寒いですねィ」

「そうだな。」


てオイ!呼び出しといてなんでェそのやる気のねェ返事は!


「帰りやすかィ」

「…………そうだな。」


なんでェその間。
わかったぞ。あれだ、こいつあれだ。
平気なふりして本当は淋しぃんだ!
名残惜しいんだ!
女々しい野郎でェ。
ちょっとからかってやるか!


俺は土方さんにぐっと近づき、耳元で


「土方さ〜ん。淋しいんですかィ?なんなら俺が、慰めてあげやしょうかィ?」


と囁いた。
きっと
馬鹿いってんじゃねー!淋しいわけないだろ!
とかそれこそ馬鹿みたいに喚くんだろうな…
そう思いながら見上げた土方さんは予想外の反応をした。


顔を真っ赤にして
「総悟っバッなぐなぐ慰めるってお前っ何ゆってんだよ!」

「あはははははは!」

「笑ってんじゃねー!」

「すんませんっだって土方さんが真っ赤になってるから。もしかして、図星だったんですかィ?そんなに、淋しいんですかィ?」


笑い過ぎて痛くなった腹を押さえながら聞くと


「淋しいよ。」


馬鹿みたいに真面目な顔をした土方さんが呟いた。


「淋しいよ。」


噛み締めるように、二度も。


びっくりした俺はそれでもからかいながら土方さんの頭を撫でた。


「土方さんは淋しん坊でちゅねィ。」


ずいぶん大人しく頭を撫でられていた土方さんにいきなり力強く手を捕まれ
さすがにやり過ぎたかと思って離れようとしたら
そのまま引き寄せられ野郎の胸の中へ


なんでェ?この状況、なんで野郎に抱きしめられてるんでィ?


「ちょ、離して下せィ土方さん!」

「淋しいよ。」

「へ?」


見上げた俺が見たのは
物凄く切なそうで辛そうな
今にも泣き出しそうな土方の野郎で…


「総悟、お前にもう会えなくなるかと思うと俺ァ淋しい。
だから…」

「だからなんでィ?わかったから、離して下せ…」


土方の野郎は答える変わりにキスをした!


〜〜〜〜〜!!!!!!!


「ちょ、土方っ何やっ…んんっばかっやっめ…」


全力で逃れようとする俺を抑えつけて
何度も何度も深くて切ないキスをした


苦しい…でもなんか頭がぼーっとして気持ちいいかもって、そうじゃねェだろ!俺!と、ぐるぐる考えてるうちに
やっと唇が離れた。


「土方てめぇ!なにしやがるんでィ!!」


ぶん殴ってやろうと見据えた土方は
自分からキスしたくせに酷く傷ついたような顔をして


「ごめん。俺、帰るわ。許せよ。じゃーな」


と言って背中を向けて歩きだした。


「土方ああああ!!!」


俺の叫び声に一瞬ビクッとした土方が振り向き呟いた。


「我慢してたけど、最後だと思うと我慢出来なくて。ほんとごめんな。じゃ」


土方は逃げるように足を早めた。


最後?最後…最後。
そりゃ今日は卒業式。学校にくるのは最後だ。
もう会えない?
会えない。のか?
土方と?ほんとに?
なんでェそれ。なんで会えなくなるんでィ?



そんな事をぐるぐる考えながら気付いた時には走り出していた。
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