***sTorY***

□熱視線
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「申し訳ありやせんでした!!」



屈辱感をグッと堪え、畳に頭をつける。
そう、土下座だ。
俺ァいま幕府が贔屓にしている
料亭の一室で土下座している。
仕事で重大なミスを犯してしまったのだ。



幕府お抱えの真選組で
要人を怒らせたとなると大変な事だ。
いつもなら、んなもん糞くれぇでさァ。
なんて言うが、今回はそれどころではないらしい。
さすがにクビになったら仕送りも出来なくなるし
武州に戻ってもろくな職にはつけねぇだろぉし
なにより姉上に心配をかけたくねぇ。



「この度は部下がとんでもない事をしてしまい、大変申し訳ありません。」


隣で土方さんが真摯に土下座をする。
自分のせぇで土方さんが土下座をするのはさすがに心が痛む。



少しでも相手の機嫌が良くなるように土下座したまま続ける。



「本当に申し訳ありやせんでした!
僕に出来る事があれば、なんでもやらせていただきやす。」



僕だってよー。うへーへどが出る。
自分の吐いた言葉に胸やけがしそうな思いを堪えながら
相手の出方を待つ。



「ほう、なんでも?」



食いついた!
なんでもったって、さすがにそこまでひでぇ事はさせねぇだろ。
俺ァ高を括っていた。



「へィ。なんなりと。」




そう言う俺を土方さんは心配そうに眺めているが
謝っただけで機嫌が直らないのなら仕方ない。



「面白い。沖田くん、顔をあげなさい。」


「へィ。」



幕府の要人を臆することなく見つめる。



「君は中々可愛い顔立ちをしているねぇ。」



舐め回すように体中を見られ、寒気がして
いまさらながらゴクリと唾を飲む。



「ありがとう…ごぜぇやす。」



「うん。気に入った!
脱ぎなさい。」



「はァ!?」



自分の立場を忘れ、思わずしかめっつらをして声を上げてしまう。



「聞こえなかったのかい?脱ぎなさい。そう言ったんだ。」



「いやっあの、さすがにそれは…」


慌てた土方さんが止めに入るが相手は聞き入れようとせず



「君…でもいいんだけど、沖田くんのミスだ。
なんでもすると言ったのも沖田くんだ。
武士に二言はなかろう?」



なんでもの範疇じゃねぇだろ!!!!
思わず刀で叩き切ってやりたい衝動にかられるが
それをしてしまうと土下座までした意味が無くなってしまう。



「…わかりやした。」



武士に二言なんてあってたまるか。
ただ脱ぐだけだ。
腹を決めた俺に土方さんは心配そうな顔でとめようとする。


「沖田っいくらなんでも…」


「大丈夫でさァ。生娘ってわけでもねぇし、心配しないで下せィ。」


安心させるように頷き立ち上がろうとすると



「まぁまぁ、いきなりただ脱ぐのもつまらないから、ゆっくり酒でも飲みながら。
ね、沖田くん、座って座って。」



ニヤリと厭らしい笑顔を浮かべ酒を勧めてくる。
俺ァ酒なんざほとんど飲めねぇし
正直さっさと脱いで終わらせたかった。
だが、そう簡単には終わらせちゃくれねぇようだ。


「…へィ。頂きやす。」


渋々、盃を差し出し注がれるまま飲み干す。


「なかなかイケる口じゃないか。」


ニヤニヤとした笑顔を浮かべながら
次々に注ぎまれる。


あっちー
頭がふわふわする
酒が回ってきたかな…
このままじゃ脱ぐどころか、吐く!!



「ちょっ…さすがに勘弁して下せィ。
そんなに酒、つよくないんでさァ…」


いささか怪しい呂律で伝えると
さすがにこのまま潰れられては元も子もないと思ったのか


「そうだねぇ。じゃあそろそろ脱ごうか。
暑くなってきたでしょ。」



一層ニヤニヤした笑顔で俺の体に隅々まで絡み付くような視線を投げかける。


「へィ。」


本当に暑かった俺ァぼーっとした頭で答え、素直に制服のジャケットを脱いだ。
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