***sTorY***

□その瞳に映るもの
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「いい加減認めたらどうですかィ?旦那〜。」


「だーかーらー、ヅラとはなんにもねぇって!
しつけぇなぁ…ったく」

俺ァ無機質な机に寄り掛かり
だるそうに足を組み椅子に座った旦那と
取調室でこんな押し問答を続けている。


「んだよ。
いきなりこんなとこに連れて来て
ヅラと仲間じゃねーかとか
会ってんじゃねーかとか…」


心底 面倒くさそうに呟く。


「でも旦那ァ…、あんたいつだってどこでだって
桂がなんかやらかしたら、居るじゃねぇですかィ。」


「たまたまだって…ほんと…しつけぇなぁ。」


「それに、銀時。なんて呼び捨てまでして
ただならぬ仲なんじゃねぇんですかァ?」


「はぁ…」


「旦那。俺ァ、怒ってんでさァ。」


その一言にピシリと空気が凍りつく


「怒って…る。だと?」


旦那からだるさは取り除かれ
一気に不機嫌な声になる


「そうでさァ。俺ァ怒ってるんでィ。」


「あのさ、言っとくけど
俺も怒ってんだけど」


俺の怒ってる理由なんか聞こうともせず
強い口調で言い切った
「…なぁんで旦那が怒るんでィ?」


怒らせるような事をした覚えはない。
ただ理由を聞いただけなのに
そんな事もわかんねぇのか?と言いたげな顔をする。


「…好きな奴に久しぶりに会えたと思ったら
こんなとこで、わけわかんねぇ
いちゃもんつけられりゃ
誰だって怒るだろ!
だいたいヅラとの仲を怪しむ前に自分の事棚に上げてんじゃねぇよ!!」


ガン!!
と強く机を蹴りあげた


旦那の予想外の行動にビクリッと体が震える
好きな奴…
さらっと好きと言ってのける旦那
この好きは俺の好きとは違うんだ
そんな簡単に言える、好きなんか…
それに俺だってこんなとこで会いたいわけじゃねぇ


「じっ自分の事、棚に上げてって何の事ですかィ?俺ァ旦那みたいにふらふらしてやせんぜィ。」


「はっ!
たまにこっちから誘っても
やれゴリラと稽古だ
やれマヨラーと見回りだ
やれ地味な奴とミントンだ…
そうやって誰にでもいい顔してんだろ?」


俺を見上げる旦那の眼光は鋭く
ピリピリとした空気に包まれる



「俺ァ誰にでもいい顔なんかしませんぜィ!
それに旦那、好きったって適当にヤれてラッキーくらいにしか思ってない…」


俺が言い終わる前に旦那が声を荒げる


「お前、バカにしてんの!?
…俺しか見れなくしてやろうか?」


いきなり胸倉を掴まれキスをされる


「ちょっ…だんっな…んっ
なに…するっ…んん…はっ…」


舌を深く絡め上げるような激しいキス
息つく暇さえ与えてくれない


「んっふっ…はっ…んん…
やめて下せィ!!」


力いっぱい抵抗してなんとか旦那を引き離す


「あのさぁ…」


酷く無機質で冷たい声が響く


「なん…でィ?」

「俺がなんで、帯してんのに
ベルトしてるか知ってるか?」

いきなり見当外れの質問をされ戸惑う

「は!?知りやせん…それがどうかしたんですかィ?」


俺の質問には答えずに
ベルトを外す

ピンッと伸ばしたかと思うと…
グッと近寄り耳元で囁く

「縛る為だよ」

は!?縛るってなにを?
荷物でも縛ろうってのか??
なんて考えていると
旦那はあっという間に俺の両手を縛った


「ちょっ!なにしやがるんでィ!!!」

「うるせぇなー
縛ったんだよ。わかんねぇの?」


「なっなんで、そんな事するんでィ!!」


必死にベルトを外そうとするが
固く結ばれ、もがけばもがくほど
ベルトは手首に食い込む


「なんでって?
言ったろ。俺しか見れなくしてやろうかって。」

低く囁く旦那の目は冷めきっていた


こんな事…しなくたって
俺ァ旦那しか見てねぇのに
旦那は俺以外のものを見ているんだろっ
ただのセフレに…
なんでこんな事っ!!


「…旦那、外して下せィ。」


「嫌だね。」

願いを一蹴され、体を強く引っ張っられる
バランスを崩し、縛られた両手で机に手をつく
ゆっくり旦那が近付いたかと思うと
後ろから抱きしめられる
こんな状況にも関わらず高鳴る胸に涙が出そうになる
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