***sTorY***

□大人の余裕
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頓所をぶらぶらと歩いていたら
土方の野郎を見かけた


いつもみたいに斬り掛かってやるか
それともバズーカでもぶっ放してやろうか…


茂みからコッソリと近づくと
話し声が聞こえてきた


ん?見えねぇところにもう一人居たのか…


一体、こんなとこで何の話しだァ?


まさか…愛の告白だったりして
へへっと笑いながら耳を傾けると


「…土方さん、好きなんです。
俺と付き合ってください!」


俺の耳に飛び込んできたのは
まさしく、愛の告白だった

誰だ!?この声…は、山崎か?
土方さん、なんて返事すんだろ…

まさか…
OKするわけねぇよな!?
自分が告白したわけでもないのに
俺の心臓は激しく音を立てていた


嫌だ…嫌だ…嫌だ嫌だ!!


「あー。。。ありがとな」


っ!?OKすんのかよ!?
目の前が真っ暗になる


「でもわりぃ。
今は誰とも付き合う気ねぇから。」


頭をかきながら申し訳なさそうに断る。


紛らわしぃんだよ!
泣きそうになっただろ!土方バカヤロー!!


「土方さんが誰とも付き合わないのは
…沖田さんのせいですか!?」


はぁ!?
なんでそこで俺が出てくんだよ!
そりゃっ俺ァ…土方さんが好きだけど
別に付き合ってるわけじゃねぇし
それに土方さんは俺の気持ちなんて知らねぇはずだ…。


土方さん…なんて返事すんだろ
聞き逃すまいと自然に体が前に出て
ガサッと音を立ててしまう


しまった!!
バレたか?
体を小さくかがめ息を殺す。


「…なんでそこで総悟が出てくんだァ?
アイツは関係ねぇよ。」


よかった…
バレてないみたいだ。
はぁっと静かに息を吐く

確かにこの告白に俺ァ関係ねぇが
好きな相手からハッキリ関係ねぇと言われると
ズキズキと心が痛む。

んな言い方しなくてもいーじゃねぇか。

これ以上 聞きたく無ぇ…その場を離れようとすると


「土方さんは…
沖田さんの事が好きなんじゃないですか?」


体が動かない。
なぁんて事を聞きやがるんでィ!
また心臓が激しく音を立てる。


「……好きじゃねぇーよ。
あんなガキ。」


終わった。
頭をガツンと強く殴られた気分だ
考えるより先に涙がぽろぽろと溢れる
気付いたら俺ァ走り出していた


真っ暗な自室に閉じこもる


最悪だ…
そりゃ、好きじゃねぇんだろぉな
とは思っていたが
まさか本人の口から聞かされるとは


ダメージでけぇー。


突き付けられた事実はあまりにも重く心にのしかかる


当分、土方さんの顔まともに見れねぇかも…


涙が次々に溢れる
誰かに見られた時の言い訳なんか
今の頭じゃ思いつかねぇ
寝巻の薄い着物に着替え
アイマスクを付け、布団に包まる


トントン


扉を叩く音がする


誰だ?誰でもいいか…
今は誰とも会いたくねぇ
ってか会えねぇ


返事をしなけりゃ
諦めてどっか行くだろぉと思っていたが
気配は遠のかない


もう一度トントンと叩く音がして
扉が開く


「総悟?寝てんのか?」


土方さん!?
なにしに来たんだよ!


そう聞きたかったが
聞いたところでまともに会話なんざ出来ねぇと思い直し
寝たフリを決め込む


早く出ていかねぇかな…


祈るような気持ちで
アイマスクの下の目をギュッつむっていると
ドカリッと俺の横に座り込む音がする


出ていかねぇのかよ!!


「…なぁ、総悟。
お前さっきあそこに居ただろ?」


耳元で声がして
体がビクッとなる


起きてるのを認めたようなものだ


観念してなるべく普通に話しをする


「なぁんの事ですかァ?
俺ァいま、寝てるんでさァ…
出てってくれませんかィ?」


俺の努力は虚しく
完全な涙声になっていた。


「総悟っ!おまっ!泣いてんのか?
…やっぱり聞いてたんだな。」

「泣いてなんか!
俺ァなんにも聞いてませんぜィ!
いいから、出てって下せィ!!」

「だったら、その人をバカにしたよぉなアイマスク取れよ。
そしたら出て行ってやる。」

泣き顔なんざ、見られてたまるか!

「嫌でさァ。」

体を縮め、完全に布団に潜りこむ

「じゃあ…」

じゃあ?

「俺が外してやるよ。」

いきなり布団が剥がされ
土方さんが俺の腹に馬乗りになる

「重ってぇ!なにしやがるんでィ!
降りろよ!!」

「嫌だね。」

必死に抵抗するが
力で敵うはずもなく
片手一本であっという間に頭の上で両手を抑えつけられる

「じっとしてろよ。
泣いてねぇんだろ?」

土方さんの指がアイマスクにかかる

「やめろっ外すな!見るなァァ!」

俺の叫びは虚しく響く

ズルリとアイマスクが外される

少しでも見られないよう顔を背けるが
土方さんの手で抑えつけられ
グイッと正面を向かされる

なんで…こんな事…
好きじゃないなら
放っといてくれりゃあいいのに…

また涙が溢れ出し、視界が揺れる
土方さんの顔がぐにゃりと歪み
俺ァ目をつむった


「やっぱり、泣いてんじゃねぇか。」

「泣いてなんかいませんぜィ。あくびでさァ…」

「ふっ、でけぇ欠伸だな。」
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