***sTorY***

□友と嘘は使い用
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「万事屋銀ちゃんの〜お帰りだ〜いっ~
神楽ちゃ〜ん!帰ったぞ〜~」


チャイナ娘は留守だろうよ…。
いちいち顔を出すのも面倒なので
俺ァもう一度仮眠する事にした。


部屋の扉が開きすぐそこまで近づく足音
ん?旦那の部屋はここじゃねぇはずなのに
酔ってんのか?面倒くせぇな〜
寝たふり寝たふり。



さらに足音は近づき
真横に旦那の気配を感じる。



覗き…こまれてる?
甘い匂いが強くなった。
やっぱりこの甘い匂いは旦那の匂いだったんだ…
なんてぼんやり考えてたら



唇に柔らかい感触…
なんでィ?これ…
うへ…酒くせぇ
もしかして…
キスされてる!?



なっななななな
何しやがるんでィ!
と一発殴ってやろうと思ったが
突然の事で体に力が入らない。
酔っ払ってるとはいえ、野郎にキスされるなんざ
気持ち悪く?
気持ち悪くねえ…
なんでだ?
なんで気持ち悪くねぇんだ?
なんでィ。このトキメキ…
ドキドキ…してる
旦那だから?
これが土方の野郎なら…
間違いなく斬り殺してる。
なんて事をぐるぐると考えていると



完全に寝ていると思ったのか
最初の弱々しい口づけから、さらに激しくなるキス


う…うう…
舌が…絡んでくる…
旦那の熱い吐息で…頭がボーッとする


「んん…」


漏れる吐息に応えるかのように
さらに深く絡ませる舌。


旦那の舌…なんでこんなに気持ち良いんでィ…


髪を優しくかきあげられさらにドキドキする胸。
やっと唇が解放され一息ついたのもつかの間…
落ち着く間を与えず
耳へ…首へと旦那の唇が滑る…



やっばい…
これ以上はさすがに
無理…
気持ち良過ぎて変になりそうでィ…



押し寄せる快楽の波に怖くなり
意を決して俺ァ声をあげた。



「んん!?旦那!?なにしてるんでィ!?」

「!?沖田っくん!?ごごごごめんっ!」

「いや、だから、なにしてるのかって聞いてるんでさァ。」

「あの〜銀さん酔っ払っててさ、ほんとごめん。
もう醒めたから。酔い、醒めたから!」

「酔ってたら、男にでもキスするんですかィ?」


胸のドキドキを悟られない為にもあえて冷たく聞いた。
一瞬ギクリッとした旦那が慌ててこう答えた。


「いや、あの、ほら、あれだよ!間違えたの!ちょっと間違えたの!
悪気はなかったんだよ。でも布団かぶっててよく見えなかったしさ
許して!300円あげるからああああ!」



まち…がえた?
誰と?
誰と間違えたんでィ!
旦那にそんな相手がいるなんて!!!
取り乱しそうになる気持ちを必死に抑え、なるべく冷静に聞いた。



「だぁれと間違えたんでィ?
それにしても、旦那ァ。間違えたとは言え、こんな事する相手が居たんですねィ。」


よし。声も震えなかったし動揺はバレてないはずだ。
なんとか憎まれ口を叩いた俺に旦那はむきになりながらこう言ってのけた。


「そりゃ、アイツだよ。アイツ。
銀さんにだって、そゆことしたい相手くらいいるっつーの!
ま、ガキにはわかんねぇ世界だよ!」


相手が居る…
間違えたって事は
俺じゃないって事…
当たりめぇか
ガキで年下な、ましてや男の俺なわけねぇか…


突然突き付けられた事実に
俺は溢れそうになる涙をこらえながら
出来るだけ投げやりにこう言った


「アイツだかドイツだか知りやせんが。
もう間違えないで下せィ。迷惑なんで。」

「迷惑…そりゃそうだよな…」


酷く傷ついた声を出した旦那に、俺ァ気づく余裕もなく冷たく続けた。


「今回は協力してもらってるんで無かったことにしときまさァ。
さ、大事な仮眠中なんで
出てってもらえやせんかィ?」

「悪かったな。仮眠の邪魔しちまって…
犬にでも噛まれたと思って、忘れてくれ。」


申し訳なさそうに謝る旦那の言い訳を
これ以上聞きたくない俺ァぶっきらぼうに答えた。


「へいへい。」


忘れろ?
嬉しかったのに


自分の考えにハッとする


旦那にキスされて
嬉しかった…
そうか…俺ァ旦那の事が
好きっだったんだ…
憧れで片付けられる気持ちじゃない事に付いた時には
すでに他に好きな相手がいる事を本人から聞くなんて…
気付いた瞬間失恋かよ
やっべぇ
なんか…泣き…そ
我慢…しなきゃ
泣いたら絶対変に思われる…
泣くな…泣くな…
これ以上旦那の言い訳を聞いているとまともに話す事も出来なくなりそうな俺ァ
旦那に背をむけて布団に潜り込んだ。



しばらく無言で立ち尽くしていた旦那も、諦めたように

「…お休み。」

と呟き部屋を出て行った。

うう…
泣くかと思った…
今日は絶対に厄日だ。
即失恋なんて神様が居るならぶん殴ってやりてぇ気分。
こんな時は眠るに限る!と自分に言い聞かせるが
どんなに眠ろうとしても
旦那に言われた言葉が
ぐるぐると頭を駆け巡り
結局一睡も出来ずに朝を迎えた。
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