***sTorY3***

□特別になりたくて
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縁側で夜風がさらさらと流れるのを感じながら
ぼーっとしていると隣に土方さんが座る



「土方さん…」

「んー?」



お互い、前を向いたまま他愛のない話しをする
言ってみるか?俺の気持ち…



「俺、土方さんが好きなんでさぁ。」



「はぁ!?おまっ!なななな、なに言って…熱でもあんのか!?」


チラリと目を向けるとくわえたタバコを落とし
かなりうろたえて頬を赤くしている


そりゃそぉか。
いきなり野郎から好きって言われたって

ありがとう、俺もだよ

とはなるわけねぇか…
わかっていたけど、チクリと胸に刺が刺さる
無理矢理、笑顔を作り



「土方さん…なぁに慌ててんですかぃ?俺達、家族みてぇなもんでしょぉ?」


「あ!?ああ!そうだな!!焦ったぁー…」



ゴホンッと咳ばらいをして


「家族、だもんな。俺もおめぇの事、……好きだよ。」


ちょっと困ったように照れながら
笑顔で優しく頭を撫でられ、涙が出そうになるのをグッとこらえ立ち上がる



「総悟?」


「部屋、戻りやす。」


おお、寝冷えすんなよー
追い掛けてくる声にひらひらと手を振り
自室の布団に潜り込む



好き。かぁ…



 家族 その理由が無ければ言えない一言
言ってもらえない一言



その一言は甘すぎる
そして辛すぎる…



聞きたい。だけど、聞いてしまうと
土方さんの自分への想いが家族愛だと思い知らされる
それでも、偽りでもいい、錯覚でも…
聞きたい…



バカみてぇ。言ってもらったら傷付くくせに
それでもその一言が欲しいなんて
バカバカし過ぎて泣きてぇ気分だ



土方さんの言った、好きを頭の中で繰り返しながら眠りについた







パタパタと廊下を歩いていると首ねっこをひっつかまれる



「ぅわっ!」

「総悟、今日は張り込みだからちゃんと用意しとけよ。」

「土方さん…言われなくても、わかってますぜぃ。」


パッと手を離されバランスを崩す


「わっ!」

「おっと!」


土方さんに抱き留められドキドキと胸が高鳴る


「総悟…おもてぇからさっさと退けよ。」

「ひっ土方さんがいけねぇんでしょ!!」


慌てて離れるとグッと腕を引っ張られ、振り向いた俺は赤くなった顔をバッチリ見られてしまった


「総悟…」


戸惑いに揺れる瞳を睨みつけ、一発蹴りをくれてやる


「ぐぁっ!総悟!ってめぇ!!」

「いきなり、掴んだ仕返しでさぁ!」


腕を振り払いずんずん歩く


見られた…変に、思われてねぇよな…
くそっ!
よりによって、土方さんと張り込みだなんて
理性がもたねぇ…
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