君と巡る季節
□初夏
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〜初夏〜
―風丸Side
「吹雪!?おい!吹雪ッ!!」
突然呼吸困難を起こして倒れ込んだかと思えば吹雪はぴくりとも動かなくなってしまった。
薄く開いた唇からは必死で酸素を取り込もうと、か細く空気が出入りを繰り返していた。
息をしている事に少しホッとする。
しかし、まだ安心は出来ない。
辺りを見渡す。
人通りは全くと言って良い程無かった。
ぞわり、と背中に鳥肌が立つ。
もしかして、俺は吹雪に何かとんでもない事をしてしまったのではないのか…。
外に連れて来たのがまずかったのか?
それとも場所?
川の音が、草木が風にそよぐ音が、
まるで自分を責め立てるかのように辺りに大きく響いた。
今、自分の腕の中に倒れ込んでいる吹雪の顔はこの暗闇の中で、とても蒼白であった。
胸を締め上げられるような不安に襲われる。
吹雪がこんな状態になったのは初めてではなかった。
でも、こんなに不安になったのは初めてだった。
落ち着いてものを考えられなくなり、俺は混乱状態のまま、吹雪の身体を抱き上げた。
その身体はびっくりするくらい軽かった。
それがさらに恐怖となって纏わり付き、俺はただ、暗闇の中、今来た道を全速力で駆けた。