coupling

□オレンジジュース
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「な…なに、これ…」




テーブルの上に置かれた白い買い物袋の中には黄色の物体。所謂バナナが袋二つに大量に入っていた。


それを見たリンはレンに向かって叫んだ。




「ちょっとレン!!? 何なのよ、この大量のバナナッ! 私、ミカンも買って来てねって言ったわよね!?」




幾ら袋の中を漁っても黄色ばかり。
リンの大好きなオレンジは見つからない。




「だ、だってさ、バナナ大安売りしてたし、」


「だってじゃないわよ!! どうしてあんたはそう自分の事ばっかり…!」




リンはバナナを一つ千切って、それをレンに投げ付けた。




「っ…」


「レンのバカッ! もう知らないっ!!」




リンはドタドタと足音を立て、思い切りバンッと扉を閉めて、リビングを出て行った。








「───何よっ、レンの奴…自分のだけ買ってきて…! あんな大量のバナナ、食べ切れる訳ないってのよ!」




リンは自室に戻り、ヘッドフォンを耳から外して放り投げた。




「はーぁ…」




そして、ベッドへと背中からダイブする。何回かリバウンドして、身体はベッドに沈む。


ウトウトしてきて、眠気に耐えられなくなったリンは、意識を手放した。








「ちょっとー今の音なにー?」


「あ、ミク姉」




ガチャッとリビングの扉が開いて、ミクが入って来た。
ミクはテーブルの上の黄色を見て、驚きの声を上げた。




「レンー幾ら何でもそれは買い過ぎじゃない? 幾らバナナが好きだからって…」


「つい…」




レンは苦笑して、頬をポリポリと掻いた。
ミクは呆れた様に溜息をついた。




「…で、リンが怒ってるのは何故?」


「それは…ミカンも買ってきてって言われていたのを忘れて…バナナしか買って来なかったから…」


「そう…レンはもう少し人の事に気を掛けるべきね。もうお金なくなっちゃったの?」


「うん…買った後にさ、リンの思い出してさ。…で、少し余ったお金でコレ買ったんだけど、」




レンはズボンのポケットから缶飲料を取り出して、テーブルの上に置いた。それは、リンの大好きな果肉入りのオレンジジュースだった。




「あ、オレンジジュースじゃない」


「うん、リンってこのジュース好きだろ? お詫びに…って思って買ったんだけど、あの怒り様じゃ…これで許してくれそうにないよね…」




レンはしゅん…と肩を落とす。
今回はレンの方に非があるので、レンは何時もの喧嘩より凄い落ち込み様だった。




「仕方ないなー。それじゃ、私がレンの代わりにそれ渡してくるから。そして、許す様に言ってくる」


「ミク姉…ありがとう」


「お礼はネギがいいな」




ミクの言葉にレンは笑った。
ミクも笑い、そしてオレンジジュースを片手にリンの部屋へと向かった。





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