捧物SS
□猫
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猫は一度飼うとクセになる。気ままな行動としなやかな肢体、時折見せる甘える仕草は心を掴んで離さない。
ほら、丸い瞳がこちらを見つめているよ。
さぁ、何が欲しい?
平和な日常が当たり前となったのは、ユーリが統治を始めてどれ位たった頃だったか。笑い声と話し声が耐えずに響く血盟城も、今は当たり前のモノになっている。
誰もが笑い平和を享受している穏やかな日々が、どこかノスタルジックな感じがした。
ヨザックは毎度の如く仕事の為に登城している。最近は、潜入任務も落ち着き城内での作業が増えてきたのも確かだった。
登城が増えるという事は、必然的に彼を目にする事も増える。それはそれで嬉しいのだが、最近心を悩ませる問題もあった。
回廊を書類片手に歩いていると、中庭の方から楽しそうな声が聞こえてきた。それは、見なくても誰がいるのかは分かる。隊長と婚約者殿と彼。そう、愛しい彼。
軽く溜息交じりで下を覗けば、キャッチボールとやらをしている二人の周りで婚約者殿が何やら喚いているようだ。
「あぁ〜もう、だからヴォルフもやればいいじゃん。おれ、教えてやるよ?」
「うるさ〜い。そんな事ばかりやってないで、ぼくの絵のモデルになれと言ってるん