捧物SS
□SWEET TIME
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君を手に入れる為なら、僕はどんな事でもやるし周りからどう思われようと構わない。
そう思わせる唯一つの存在。
待ち合わせのいつもの場所で有利を待つ村田は、然程(さほど)気にするでもなく行き交う人の流れを眺めていた。
天気の良い土曜日は、いつもにまして人が溢れているように感じられる。そんな雑踏の中で、微かに聞こえる足音に自然と笑みを零した。
ちょっとだけ、苛めちゃおうかな?
くすりと笑うと直ぐに厳しい顔つきに変えた。計算されたそれは、足音の持ち主が到着したと同時に向けられた。
「渋谷、時間に遅れるなんて失礼じゃないか。君が誘ったのに・・・」
「あぁ〜、すまん!ゴメン!村田。時間に間に合うように、家は出たんだけどさ、手土産買おうと思ってドーナツやに入ったらさ、ものすっごく混んでて時間かかっちゃったんだよ。ゴメン!このとーり」
深々と頭を下げて謝る有利に、眉をハの字に下げて村田は言った。
「頭上げなよ渋谷。僕は怒ってなんかないよ。ただちょっとからかっただけだよ」
その台詞に頭を上げて有利は胸をなでおろした。