捧物SS

□試練
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血盟城は相変わらず活気に満ちており、楽しそうに笑いながら作業をする従事者達が行きかっていた。以前の城では在り得なかった光景が、今では当たり前のモノになっている。
その例に漏れずヨザックも口笛を吹きながら廊下を歩いている。当然彼のそういった素行は、以前から大して変わっては居ないのだが。
変わったのは、命を賭してでも守りたい人が出来た事位だ。それも、国家主席の愛しい双黒の君。

登城するのが楽しみになったのは間違いのない事実で、ヨザックは軽い足取りで上司の部屋へと向かった。

「うむ。状況は良く分かった。暫く休暇を取るがいい」
「有難うございます。では、これにて」

形式だけ恭しく頭を垂れ上司閣下の部屋を出ると、徐に両腕を上に伸ばし大きな伸びをした。

これで自由の身だもんねぇ〜と。ちょっくら、坊ちゃんのお顔でも見に行っちゃいますかね〜

ヨザックはスキップしそうな程浮き足立ちながら廊下を歩き出した。
今の時間ではきっと魔王執務室で、汁ダク王佐と幼馴染に張り付かれて仕事をしているに違いなく、ヨザックは歩みを厨房へと変えた。目的はお茶を差し入れることに他ならない。
彼の好きなお茶の銘柄は兼ねてから承知の上なので問題はなく、一緒に持っていくお茶請けを何にするかだけが今の問題であった。

あのお茶に合うお菓子ねぇ?

一人画策しながら歩いていたヨザックの耳に流れてきたのは、愛しい彼の噂話。諜報活動の成果なのか自然と耳はそちらに向いていた。
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